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2024年11月6日「トランプ氏、米国大統領に返り咲き!」

11/6、民主党のハリス副大統領は、大統領選挙での敗北を宣言した。前回の選挙でバイデン氏に負けたドナルド・ジョン・トランプ氏が米国大統領へと返り咲くことになる。

事前の接戦という予想を大きく覆し、トランプ氏の圧勝だった。優位に進めたテレビ討論会と、トランプ陣営の失策によって中盤までは世論調査でリードしていたハリス候補だが、経済や外交面での不安が露呈し、終盤でのバイデン大統領の失言がとどめになったといえるだろう。

バイデン政権では移民や環境問題、ポリティカル・コレクトネスなど過度なリベラル政策に米国の保守層が不安を抱いたことと、長引くインフレ下で物価高が庶民の生活を直撃したことで実績に対する評価は低かった。外交面でも対中政策に強気の発言を繰り返すトランプ候補の方が頼もしく見えたことだろう。

それにしてもトランプ新大統領に対して、日本のトップが石破総理とは最悪の組み合わせというほかない。亡き安倍元総理との堅固な信頼関係を構築していたトランプ氏にとっては、石破総理は好ましくない人物と捉えられても仕方ない。安倍元総理の信奉者だった高市早苗氏が選出されていたら、対米外交は大きく違ってきたのだろうが…。

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2024年10月27日「衆院選、自公過半数割れで与党惨敗!」

10/27、衆院選の投開票日を迎え、与党である自民・公明が惨敗し、両党合わせても過半数の233議席には足らず今後の政権運営はいばらの道だ。自民は公示前の247議席から187へ、公明も32から24へとそれぞれ大幅に減らした。一方で、野党の立憲民主党と国民民主党は躍進を遂げた。

裏金問題を敗因としているようでは、再生はままならないだろう。むしろ総裁選に出馬した際の石破候補が語ったことが、総理に就任したとたん180度言を翻したことが一番の要因だろう。 国民の信頼を完全に裏切った。野党が勝ったのではなく、自公の自滅といえる。とにかく言葉が軽いのだ。二枚舌を使っても恥じる様子もない。厚顔極まりない政権が、どうして国民の支持を得られると思うのだろうか。過半数割れしても誰も責任を取ろうとせず、周りもこれを許すようでは野党のオウンゴールがない限り、政権交代も現実味を帯びてくる。発言に責任を持たない首相では対外的にも信頼を得ることは困難で、外交面でも苦労することだろう。無責任な評論家ではなく、有言実行の人材を揃えて顔ぶれを刷新することしか自民には再生の道はない。

2016年06月17日「日銀、国債保有残高3分の1を超える!」

2024年7月31日「日銀、政策金利を0.5%へと引き上げ!」

7/31、日本銀行は金融政策決定会合で、政策金利をゼロ金利から0.25%へと引き上げることを決定した。マイナス金利を3月に解除したものの短期金利は0~0.1%と低水準で、5%台の政策金利を続ける米国との金利差から円売りに拍車がかかって円安が進んだ。このたび政策金利を15年7か月ぶりの水準に引き上げて、今後も賃上げを伴う物価上昇が続くとの見通しから金融正常化を進める方針に舵を切った。

利上げを受けて7/31の外国為替市場では対ドルで円が急騰し、3/19以来の円高・ドル安となる一時1ドル149円台後半を付けた。1日で5円超も円高が進んだことになる。

このまま利上げが続けば、今後は預金金利だけではなく住宅ローンなどの借入金も上昇を始めることになる。長引いた低金利になれた変動金利の住宅ローン債務者が、なんの対策も講じなければ住宅ローン破産者も出かねないので注意が必要だ。

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2024年6月5日「合計特殊出生率1.20で過去最低を更新!」

6/5、厚生労働省は2023年の人口動態統計を発表し、合計特殊出生率が1.20と過去最低を更新した。東京都では0.99と1を割り込んでいる。8年連続で低下し、これまでの最低だった1.26を下回った。出生数や婚姻数も戦後最少で、少子化と人口減少が加速してきている。

政府がこれまでに投じた関連予算は累計で66兆円超となるものの、少子化に歯止めはかからないが実情だ。その原因は非効率的な少子化対策にある。少子化対策なのか子育て支援なのか貧困支援なのか目的が様々に混在し、それを「少子化対策」と謳って予算を投じている。無駄の極みだ。少子化という一点にフォーカスし、そこに労力と資金を集中すべきである。また、最大かつ喫緊の課題と捉えるならば、プライオリティを明確にすべきだ。子育て中の家庭や貧困家庭、高齢者世帯にもいい顔をしたいという政治家の思惑も少子化対策を矮小化している。選挙の在り方も考えるべきだろう。投票率の低下が国民の無関心と、国民に責任を押し付けるメディアのミズリードも責められるべきだ。無関心ではなく一票を投じたい人や政党がないのだ。落としたい立候補者を選ぶようにしたら、おそらく投票率は格段に上がるのではないだろうか。

国政も地方も政治家の人件費こそがこの国最大の無駄ではないかと考える。いっそAIに置き換えて人は半減しても、その方が国益にかなうのではないかとも思う。情けない一国の総理を見ていると、案外AIが総理大臣の方がましなのではないだろうか。

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2024年6月5日「毎月勤労統計調査で賃金が29年ぶりの増加率!」

6/5、厚生労働省は4月の毎月勤労統計調査(従業員5名以上の事業所)で、所定内給与が前年同月比2.3%増加したと発表した(速報値)。

政府による企業への賃上げ圧力や各種施策もあって、大企業のみならず中小事業所まで賃上げは進み、伸び率は29年6か月ぶりの高水準となった。

十分な賃上げができない事業所からは人材の流出が続き、また、労働者側もより良い条件を求めて人材の流動化が始まっている。好条件を提示できる事業所にとっては、優秀な人材を確保できる好機でもあり、勝ち組と負け組の明暗がはっきりとすることだろう。

但し、労働者にとっては収入増の実感は得られていないのが実情だ。消費者物価指数(持ち家の家賃換算分を除く)は2.9%と賃金増加を上回り、実質賃金は0.7%減で25か月連続マイナスと過去最長のマイナス期間を更新した。物価の高騰に賃金上昇が追い付かない状況が続いている。

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2024年5月31日「S&P、フランス国債を1ノッチ格下げ!」

5/31、大手格付け会社のスタンダード&プアーズは、フランス国債の格付けを「AA」から「AA-」へと1ノッチ引き下げた。今後のアウトルックは「安定的」としている。

景気低迷により2023年の税収が想定より低水準にとどまり、ウクライナ支援などでの支出がかさみ、財政悪化が進んだことを要因に挙げている。

S&Pは今後の経済成長も、政府の予測を下回る見通しを示した。

但し、「AA-」の格付けは依然として高格付けで、見通しも「安定的」としているところから喫緊のリスク要因とはなっていない。

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2024年4月26日「同意を得ない配置転換は違法との最高裁判断!」

4/26、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は、労働契約上で職種や業務を限定している場合ににおける他職種・業務への配置転換の合法性をめぐり、必要性などを踏まえ「適法」とした二審・大阪高裁判決を破棄し、使用者は労働者の同意なく配置転換を命じる権限を有しないとして初めての違法判断を示した。賠償責任の有無を検討する為、高裁へと審理を差し戻した。

他業務への異動の可能性を有する場合においては、今後は雇用契約書の「従事すべき業務」への記載を慎重になるべきとの使用者への警鐘と解するべきだろう。

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2024年4月10日「フィッチ・レーティングス、中国の格付け見通しを引き下げ!」

4/10、大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは、中国の信用格付けのアウトルックをこれまでの「安定的」から「ネガティブ」へと引き下げた。昨年12/5に、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが「ネガティブ」へと引き下げており、これに続く形となる。

フィッチは中国の国内総生産(GDP)に対する財政赤字比率が、2023年の5.8%から2024年は7.1%へと悪化すると予測している。

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2024年3月19日「日銀マイナス金利解除、利上げへ!」

3/19、日銀の金融政策決定会合で、2016年2月以来の長きにわたるマイナス金利の解除が決まった。マイナス0.1だった政策金利は、0~0.1%程度に引き上げる。

ETFやREITのリスク資産の買い入れ終了を決める一方で、これまでと同程度の長期国債の買い入れは継続するとの方針も示した。長期金利の急上昇で国債価額の下落や利払い高騰するリスクを抑え、市場の安定化を目的に、「当面、緩和的な金融環境が継続する」ことを日銀はアピールしている。

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2024年3月14日「育児休業給付金延長審査を厳格化へ!」

3月14日、育児休業給付金延長審査の厳格化方針が、労働政策審議会の雇用保険部会で了承された。今後、省令を改正し、2025年4月の入所申請から適用する方針だ。              育児休業給付金は原則、子どもが1歳となるまで給付され、保育所への入所に落選したことを証明する「保留通知書」をハローワークへ提出することで、最長2歳まで給付が延長される仕組みがある。子育ての為、妊娠・出産を機会に、以前は退職するケースが多かったのを、雇用を継続させ復職を促す為の施策として、産前産後および育児休業中の社会保険料免除や健康保険制度での出産手当金、雇用保険制度での育児休業給付金といった賃金の補填がどんどん拡充していった。  ところがこうした施策の拡充が、皮肉なことにむしろ復職を阻害する要因となっているのが現状だ。そもそもだが、復職を前提とした制度の育児休業給付金が、復職を受給の要件としていないのだ。従って延長を繰り返し限度いっぱいまで給付金を貰い切った後、一度も復職することなく退職する職員が後を絶たない。これでは本当に当てにできるのか、事業所は疑心暗鬼に陥ってしまう。休職中の職員がいつ復職するのか、あるいはそもそも復職する意思を有しているのか、まったく不透明な状況では、採用計画にも迷いが生じるのも当然だ。             

原則は子どもが1歳になるまでだが、今や事業者側では1歳で復職するとは見込んでいない。早くとも2歳、長いときには4年とか6年とか育児休業が続くこともあり得るし、育児休業給付金が終わった途端に退職届が送られてくるかもと、半ば諦めの境地に至っている。          保育園に落選したことを示す「保留通知書」だけがあれば給付金が延長される仕組みであることを利用して、1歳や1歳半では入所が困難な人気があって競争率の高い保育所を落選目的で選択することも現実に生じている。万一、入選してもそこを辞退し、他で落選の機会を狙うつわものもいる。また、子どもが2歳になる直前に次の子を妊娠し、そのまま産前産後休業から第2子の育児休業に入っていくということも案外珍しいことではない。第3子分まで約6年間続けて休業し、育児休業給付金を満額受け取り終えた後、1回も事業所に顔を出すことなく退職したケースも筆者は知っている。今後、育児休業給付金が休職前賃金の満額を給付されるようなことになれば、ますます復職の意欲を阻害していく結果となることだろう。性善説的思考か、あるいは労働者に阿いたか、いずれにせよ政治と官僚の責任は重い。

ようやくというか、遅まきながら厚生労働省が育児休業給付金の延長申請を厳格化する方針を固めた。「保育所に入所できるのに辞退していないか」、「申し込んだ保育所で最も近い施設への通所時間(自宅または職場からの時間)」、「通所時間が30分以上の場合、その保育所を選んだ理由(選択肢形式)」などが申告書の項目に加わり、また復職する意思を確認できなければ給付を認めない方針だ。笑ってしまうのは、ハローワークによる確認事項に「落選したいとの希望を自治体へ伝えていないか」の項目があることだ。今後、厳格化が抜け道だらけで実効が伴わないことがなく、事業所にとっても、真に復職意欲を持つ労働者にとっても、双方が使い勝手の良い制度へと一刻も早く正常化を図るべきだろう。

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2024年2月22日「日経平均過去最高値記録!」

2月22日、日経平均株価が39,098円68銭で終え、34年ぶりに最高値を更新した。              円安を背景に輸出企業の業績は伸び、以前から指摘していた通り電気自動車(EV)の問題点が世界で明らかとなってくるにつれ、ハイブリッド車への回帰が進んでトヨタの今期純利益は初の4兆円台に乗る勢いだ。円安効果だけではない。海外からの投資が増えたことも大きな要因となっている。これまで巨大な成長市場である中国への海外からの投資が流出を始め、新たな投資先の一つとして日本へと資金が集まり始めた。これまでも政治的なリスク、経済的なリスク、朝令暮改とも揶揄される唐突な規制の変更、知的財産の保護に対する懸念、サプライチェーンの不安定性、為替レートの変動など、様々なチャイナリスクは存在していた。ところが2023年7月に施行された改正「反スパイ法」によって、正常な事業活動であるマーケットリサーチを行っただけで逮捕監禁されるリスクが出てきた。外国人に対する出国制限措置がいつ出されるか分からない現状では、安心して駐留することもできないだろう。加えて米中デカップリングや台湾有事も迫る中で海外の企業や個人が中国への投資を引き揚げているのだ。

今回の株高は単なるバブルではなく、物価の上昇も伴った正常な状態だ。株価が上がっても賃金は上がらず、物価高で企業は潤っても庶民に恩恵がないようなことを主張するコメンテーターを見かけるが、これはまったくの的外れ。これから大企業だけではなく中小企業においても賃上げは進むものと予測する。マツダは即時満額回答を発表し、賃上げムードは高まった。今年6月から始まる賃上げ減税(税額控除)や、医療機関での診療報酬賃上げ加算などの施策もあって、今春から賃上げが進んでいくことだろう。課題は、賃上げと物価上昇のバランスである。日銀には、きめ細かい金利政策が求められる局面だ。

住宅ローン破綻者が、今後社会問題化してくる懸念がある。変動金利は2008年以降一貫して下落しており、2023年12月には0.375%まで下がった。こうした低金利を受け、変動金利で長期の住宅ローンを組んでいる債務者は多い。一方でフラット35などに代表される固定金利は既に上昇を始めている。変動金蟻が急上昇した際に、先んじて上昇している固定金利への切り替えは難しく、変動金利での最大のリスク要因である「未払利息」によって気付いたときには、家を失い債務だけが残る住宅ローン破綻者が出てくることだろう。金利上昇時の最大の懸念材料だ。これがどこまで景気回復の足を引っ張ることになるのかが懸念されるところだが、少なくとも公的資金を注入しての救済は絶対に避けるべきだ。自己責任を安易に税金で救済することはモラルリスクを助長することに繋がるからだ。未払利息は恐ろしい。徐々に熱くなるお湯に気が付かないで逃げ出す機会を失し、気付いたときには茹で上がっている「ゆでガエル」がピッタリだ。

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2024年1月19日「正司歌江師匠のご逝去を悼む」

1月19日、正司歌江師匠の訃報に接した。94歳の長寿であった。              三姉妹の長女で、子ども心にも3人のギターや三味線を抱えた賑やかな漫才は記憶に残っている。歌江師匠は三味線を弾き、「♬うちら陽気な、かしまし娘」という歌声は当時のお茶の間に響いたものだ。大人気を博し、1966年には「第1回上方漫才大賞」を受賞した。

ひょんなことでご縁があり、随分と昔のことだが自宅にお邪魔させて頂いたことがある。   教えて貰った通り、近くの駅まで乗り継いで最後はタクシーに乗車したのだが、住所を言わずとも正司歌江師匠の家で運転手さんには通じた。「この辺りの運転手で、歌江師匠の家を知らない奴はモグリですよ」と運転手は笑っていた。

歌江師匠が「正司歌江の地獄極楽かみひとえ」という本をNHK出版から上梓された際は、私のところへたくさんの本を送ってくださった。1冊1冊にご丁寧なサインがしたためられている。  歌江師匠の半生が描かれており、とても興味深く一気に読み上げた。            それにしても同じ本を何故こんなに多く送って頂いたのかをご本人に尋ねたところ、知り合いに配って欲しいとのことだった。嬉しいという歌江師匠の気持ちがよく伝わってきて、テレビで観る通りの喜怒哀楽がはっきりとして、感情豊かで優しい人柄だった。

2004年に大河ドラマ「新選組」への出演が決まった際も、嬉しそうな声で「ぜひ観てね」とお知らせ頂いた。大河は1982年の「峠の群像」にも出演しているが、今このタイミングでの大河ドラマはよほど嬉しかったのだろう。出演して早々に亡くなってしまう役柄だったので、出番は少なかったが、本当に楽しそうで演じることに力が入っていた。

2009年には残念な連絡も頂いた。公演ポスター撮影中に、転倒して腰椎骨折をしたというのだ。退院してからも暫く自宅での静養を余儀なくされて、せめて目の保養にと花を贈らせて頂いた。その後も復活されて舞台やドラマで活躍され、かしまし娘の再結成もあった。        弊社のコラムにも寄稿頂いたこともあり、とにかく気さくなお人柄だった。          歌江師匠の人となりを思い出しつつ、故人のご冥福を心よりお祈り申し上げる。合掌。

2024年1月13日「台湾総統選で与党の頼氏が当選!」

1月13日投開票された台湾総統選で、与党・民主進歩党の頼清徳・副総統が当選した。        5月20日総統に就任する頼氏の前には、いばらの道が待ち受けている。           総統選と同時に行われた立法委員(国会議員)選では民進党は51議席にとどまり、52議席を獲得した国民党と逆転して第2党に転落したからだ。ねじれ現象が生じたのだ。          少数与党となった民進党が、これから対中政策や防衛等の予算案成立に苦労することは必至だ。中国に飲み込まれることを否とし、親米政策をとる民進党が台湾で直接選挙が始まって以来、初めて同じ政党が3期連続で政権を担うことになったのは、国民が香港の悲劇を目の当たりにしたからに他ならない。

1997年7月1日、香港の主権がイギリスから中華人民共和国へ返還された。中国は香港の高度な自治を認めるとして「一国二制度」を標榜した。しかし、イギリスが撤退後、すぐに中国は本性を露わにした。香港の高度な自治どころか自由さえなかったのだ。中国に不都合な発言をする者は学生であろうが誰であろうが罪に問われて拘束された。香港の女神と呼ばれた周庭さんも有罪となり投獄され、出所後暫くしてカナダへと事実上の亡命をしたが指名手配を受けている。   2020年9月に行われる予定だった立法会選挙に向けて候補者を立てようとしていた民主派の政治家47名は国家政権の転覆を狙ったとして、「国家安全維持法違反」で逮捕起訴された。    香港の選挙は形式に過ぎない。定員90の議席には3つの枠がある。約450万人の一般市民有権者が直接選挙で選ぶことができるのは僅か20議席に過ぎない。他は業界ごとの職能別が30議席、香港政府トップの行政長官を選ぶ権限を持つ選挙委員が40議席を持つ。職能別も選挙委員も中国の息が掛かった者達であることは当然だ。直接選挙の20議席も、選挙委員の推薦がなければ立候補することすらできない仕組みとなっている。この選挙委員は、中国の任命する全人代の香港代表等が割り当てられ、民主派は1人もいない。香港の選挙は茶番と化している。          こうした現実が、民進党の3期連続で政権を担うことのできた最大の理由だ。ならば何故、中国に与する国民党が第1党となるねじれ現象が生じたのか。台湾経済界に対する中国の経済的締め付けは熾烈を極めている。中国本土でのビジネスを継続する見返りとして、中国派である野党を支持することを約束させられるのだ。

頼政権は、身動きの取れない膠着状態を余儀なくされるだろう。中国との融和を進める野党にも配慮・妥協しなければならないことも出てくる。しかし、こうした停滞が案外結果オーライとなるかもしれない。習近平国家主席が台湾への武力行使をためらっている間に、中国国内での経済崩壊を要因として失脚するという可能性も考えられるからだ。

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2023年12月14日「EU首脳会議でウクライナの加盟交渉入り決定!」

12月14日、欧州連合(EU)の首脳会議でウクライナの加盟交渉入りを決めた。        EUでは、加盟交渉などの重要政策には全会一致が必要だ。すんなりと決定した訳ではない。  親ロシア政策を採るハンガリーのオルバン首相は、一貫してウクライナのEU加盟には強硬姿勢で反対してきた。最終的にはドイツのショルツ首相が主導して「EU条約31条」を発動することになった。建設的棄権があった場合、残ったメンバーのみで全会一致と見なす条約だ。むろんロシアを露骨にバックアップするオルバン首相が簡単に棄権に応じるはずもない。オルバン首相は棄権の見返りとして100億ユーロを超えるEU補助金を得ることができた。しかも、加盟交渉に入ったとしても将来のウクライナの加盟には拒否することを明確にし、また当面の総額500億ユーロのウクライナ支援の予算案は反対を貫いた。ハンガリーは何も与えることなく、巨額の補助金を得たのだ。対してウクライナを支援しようとするEU主要国は全会一致が必要である以上、いくら交渉を進めたところでウクライナの加盟が実現することはあり得ない。ならば何故、加盟交渉入り決定に拘ったのか?

2024年11月5日に実施される米国大統領選挙で、トランプ前大統領が返りざけばウクライナ支援どころか米国の北大西洋条約機構(NATO)離れが加速することは火を見るよりも明らかだろう。米国だけでなく欧州も、長引く戦争の終わりが見えない援助に疲弊している。もうピリオドを打ちたいのだ。ドイツは実効支配するウクライナの領土をロシアへ割譲し、その代わりにウクライナのEU加盟を認めるという落としどころを探っているのではないかと疑ってしまう。     ロシアも終わりを求めている。無論、「勝利」しての終わりが必要だ。ウクライナの領土を割譲させれば立派な勝利と言えるだろう。一方、ウクライナは領土を失う痛手は被るが、EUに加盟することで今後の安心を得ることができるということだ。ロシアが応じればハンガリーもウクライナの加盟に転じ、全会一致は容易だ。ゼレンスキー大統領が応じなければ、ウクライナ大統領の交代も画策するかもしれない。しかし、こうした侵略者を利するような終わり方をすれば、中国など他の覇権主義国家に、やったもん勝ちを学習させることになり、世界情勢はますます混迷を深め不安定となることだろう。国連の常任理事国による拒否権、EUの全会一致、いずれも一見民主的のように見えるが、結局のところ性善説に基づいた制度に過ぎない。拒否権や全会一致のルールに厚顔な輩が付け込むことになるのだ。何も決めることができず、形骸化した組織と化す。実効力を得る為には、拒否権や全会一致を見直すことが必要ではないだろうか。

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2023年12月5日「ムーディーズ、中国のソブリン格付け見通しを引き下げ!」

12月5日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、中国の信用格付け見通しをこれまでの「安定的」から、ノッチダウンの可能性を示唆する「ネガティブ」へと引き下げた。ムーディーズによる中国の格付けは2017年に、それまでの「Aa3」から「A1」へと引き下げているが、今後の見通しを「安定的」から「ネガティブ」へと下方修正したことで更なるノッチダウンが行われる可能性が出てきた。「中国政府が財政難に陥った地方政府や国有企業に対する財政支援を行う傾向が強まっている」ことを理由としている。不動産市況の低迷が長引き、地方政府の財政が悪化する中、中国の財政、経済、制度が広範な下振れリスクに直面している。

中国では不都合なことは何でも穴を掘って埋め、隠してしまうという傾向がある。新型コロナが中国の武漢から広まったときも徹底して隠蔽し、結局発生源は今だ不明のままだ。インターネット検索も、政府や共産党にとって不都合なワードは規制がかかり、海外のテレビニュースも突然映らなくなってしまう。最近ではNHKの海外向けテレビ放送「ワールド・プレミアム」が李克強前首相の死去を伝えようとすると、カラーバーと共に「信号の異常」と中国語で表示されて放送の一部が中断された。中国国内では外国のテレビ放送を当局が監視していて、政府・共産党にとって都合の悪い内容が中断されることは、決して珍しいことではない。財政や経済の指標も同様で、中国の公表する数字は当然の如く手が加えられている。大手不動産グループが次々と破綻しているが、地方債務は政府債務の中に隠されてしまいブラックボックス状態と化している。 中国経済を支えてきた数多のシャドーバンキングにも、隠れ債務が膨れ上がっていると考えられる。顕在化して国民の不満が政府に向くようであれば、習近平国家主席と軍部は目を逸らす目的で台湾や日本への武力行使に踏み切る可能性もあり、予断を許さない状況が続いている。

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2023年11月24日「物流業界で水素トラックの導入進む!」

日本郵便が水素燃料電池(FC)トラックの導入を決めた。日本通運や西濃運輸、福山通運でもFCトラックを進めており、物流業界では脱炭素対策として電気自動車(EV)ではなく、補給時間が短く航続距離の長いFCトラックへの指向が主流となりつつある。日本郵便では11月末以降で最大積載量3トンの小型FCトラックを順次首都圏から導入し、2025年以降は最大積載量10トンの大型トラックも導入していく計画だ。日本通運は2023年末までに20台を導入し、福山通運や西濃運輸も小型車から導入を進める予定としている。日本郵便が今回導入するFCトラックでは、1回10分の充填で260キロを走行できる。今後も車両の技術向上による航続距離の延長、また低価格の実現などがトラックに限らずFC車両を進める要素とはなり得るが、最大の肝は水素ステーションの全国での拡充だ。これまでも政府主導で進めてきているが、まだまだ遅く十分とは言えない。     EVを後押しするくらいなら、FCへと全振りするのが政治の責任と言うものだろう。

2024年度からは国土交通省が規制を緩和して、高速道路のサービスエリアにも水素ステーションを設置できるようになる。これまでは規制の中で、ガスリンとEVスタンドしか設置が認められてこなかった。長距離を走行してこそFCトラックの本領が発揮できるというものだろう。    また、まだまだ首都圏に限られている街中の水素ステーションを地方を含めて全国に網羅することも必要だ。その際は既存のガソリンスタンドの活用が有効と言える。

物流業界を悩ましているのは輸送網全体の二酸化炭素排出量(スコープ3)だけではない。   トラック運転手の時間外労働が2024年4月から年960時間に制限される「2024年問題」の方がむしろ喫緊の課題だ。少子高齢化や若者の車離れを受けて運転手不足は加速してきている。   仕方なくベテランの高齢運転手に頼ることになるのだが、経験値は高くとも加齢による能力の低下に伴う事故のリスクを抱え込むことにもつながってくる。自動運転トラックの実現化が急がれるところだ。ホンダと米GM、それに自動運転サービスを手掛けているGM子会社の3社で2024年前半にも合弁会社を立ち上げ、2026年から東京都内を中心に無人運転サービスを始める計画が発表された。特定条件下で完全自動運転化する「レベル4」に対応している。新会社は日本に設立し、ホンダが過半数を出資する。車両はホンダとGMなどが共同開発した自動運転車両「クルーズ・オリジン」を使用する予定で、対面席で6名まで乗車できる。既に米国でのテスト走行は実施済みで、日本でも栃木県で走行実証を進めてきた。高齢化や過疎化が進む日本においては極めてプライオリティの高い案件と言えるだろう。人にとって代わる完全自動運転の技術は、ヒューマノイドロボットにも応用でき、家事や介護などにも役立つことが期待できる。  

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2023年11月10日「ムーディーズ、米国ソブリン格付けアウトルックを引き下げ!」

11月10日、米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、米国国債の格付け見通しをこれまでの「安定的」から、ノッチダウンの可能性を示唆する「ネガティブ」へと引き下げた。格付け自体は最上位の「Aaa」を維持している為、影響は僅少ながら注目点はムーディーズであるという点だ。やはり米系大手のS&Pグローバル・レーティングスは、2011年8月に米国債を「AA+」へと1ノッチ引き下げており、また米欧系フィッチ・レーティングスも2023年8月に「AA+」に引き下げた。2011年にS&Pがノッチダウンした際には、その情報を受けて金融市場は混乱したが、結果としてまだまだ強いと考えられた米国債が買われることとなり、むしろ長期金利は低下している。今回は格下げではなく単なるアウトルックの修正に過ぎないのだが、比較的米国政府寄りと考えられるムーディーズがネガティブと公表した意味は大きい。

日本の適格格付機関は上記米欧系3社に加え、日経新聞系列のR&Iと旧:大蔵省が設立した政府系のJCRの5社なのだが、かつてムーディーズやS&Pが日本国債の格付けを次々と引き下げていった際も、日本の2社は最上位の「AAA」を堅持し続けた。また民間の山一証券が破綻する前も、米欧系格付け会社が「投機的」、それもデフォルト直前とまで格付けが引き下げられた後も「投資適格」を維持し続けていた。何と海外と日本の格付け会社の間で8ノッチもの格差が生じていたのである。理由は、日本の格付け会社の主要株主に銀行や証券会社、生保などの金融機関が入っていたからに他ならない。しかし、山一証券の破綻時期を予測する上では日本の格付け会社が参考になった。株主におもねる格付け会社も、さすがに「投資適格」のまま破綻を迎えるわけにはいかない。自社の信用力が失墜するからだ。通常は間をあけて徐々にノッチダウンしていくものだが、このときは時間がなかったのであろう。一気に引き下げていった。三段跳び、四段跳び、本当に数日で「投資適格」からデフォルト直前まで一気に引き下げられた。ムーディーズ・インベスターズ・サービスが今後、米国債のノッチダウンを実施した場合は大手3社の格下げが揃うことになり、市場に与える影響は軽微では済まないだろう。米国債が売られ、長期金利が上昇する可能性がある。

米財務省は、今回のムーディーズによるアウトルックの「ネガティブ」変更について、「我々は見通しの変更に同意しない。経済は引き続き堅調で、米国債は世界で突出して安全で流動性の高い資産である」とのコメントを発表している。  

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2023年10月10日「イスラエル、ガザの完全封鎖を宣言!」

10/10、イスラエルはパレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスの拠点など1300カ所以上を空爆し、ガザの完全封鎖を宣言した。イスラエル政府は7日夜の治安閣議で、ガザへの水・食料・電気・燃料の供給を断ってハマスの軍事力・統治力を破壊すると決定している。圧倒的な軍事力を有するイスラエルが絨毯爆撃を行い、今後地上部隊が侵攻すればハマスだけではなく一般人の死傷者は膨れ上がっていくことだろう。かと言って、イスラエルによる大量虐殺と非難するのは筋違いというものだ。そもそも紛争の発端は、7日朝のハマスによる数千発(最初の20分間で5千発以上とハマスの司令官は主張し、イスラエル側も少なくとも2千発以上と認める)にも上るロケット弾をイスラエルに突然撃ち込んだことに起因している。不意打ちの攻撃でイスラエル側は1千人以上の死傷者を出し、100人以上の民間人が人質として連れ去られた。しかもハマスが奇襲を仕掛けた7日はユダヤ教の連休中だった。情報機関「モサド」を抱えるイスラエルや米国も、ハマスの攻撃を事前に予見できなかったことが多くの犠牲を生んだ。イスラエルの反撃を非難するならば、まずはハマスのテロ行為を責めるべきであろう。

ハマスの唐突な攻撃は、米国の仲裁でイスラエルとサウジアラビアの関係正常化が背景にある。イスラエルとアラブ諸国との和平が進むことに焦りが生じたのであろう。

これまでパレスチナは虐げられ続けてきた歴史がある。イスラエルとエジプトが築いたフェンスに囲まれた「天井なき監獄」に押し込められた。イスラエルのネタニヤフ首相は、入植活動を加速させている。2022年のガザの一人当たり所得は僅か1257ドルと、イスラエルの40分の1以下に過ぎない。だからといって、一部のメディアや有識者が主張するようないじめられ続けた弱者のささやかな抵抗として、テロ行為を正当化することなどできないのは当然だ。戦闘の中止や終結を求めるのならば、最初の被害者であるイスラエルではなくハマスに訴えるべきであろう。攻撃を始めたハマスが責任を取るのが先決だ。それでなければ、イスラエル側も納得できないであろう。これまでのパレスチナ問題は、イスラエルだけではなく、見て見ぬふりをしてきた先進各国の責任が大きい。今回の紛争終結後には、2国間共存に向けた公正な枠組み作りを世界で取り組んでいく必要がある。しかしながら、そもそもパレスチナはユダヤの存在そのものを認めておらず、共存は困難を極める。そこには、宗教問題が深く根付いているからだ。

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2023年7月16日「TPP、英国加盟を正式承認!」

7/19、環太平洋経済連携協定(TPP)参加国の11か国は、去る3/31に合意に至っていた英国の新規加盟を正式に承認した。今後は参加各国の国内手続きを経て、1年以内の発効を目指すことになる。英国の参加で貿易総額は6.6兆ドルから7.8兆ドルに、総人口は5億1千万人から5億8千万人へと増加する。

欧州連合(EU)の最大の弱点は、経済状況の異なる各国が統一通貨(ユーロ)を用いることにより、金利政策が難しく矛盾を生じてしまう点にある。利上げによりインフレ抑制を図りたい国に合わせれば、景気刺激策として金融緩和を欲する国にとっては大きなマイナスとなる。こうした難しい金融政策の舵取りを担ってきたのが欧州中央銀行(ECB)だが、ドイツやフランスの意向が反映されやすい現状に、英国は少なからず不満を持っていたものと思われる。英国はEU参加後も自国通貨のポンドを残し、二重通貨体制としていたことがEUからの離脱を容易にした。離脱による経済面のダメージをTPP加盟で補おうとするのは自然な流れと言える。

2021年に加入申請をした中国と台湾のほか、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイ、さらには戦時下にあるウクライナも申請中である。今後経済効果が高まれば、加入国もさらに増えていくことだろう。米国が世界経済を主導する体制への対抗馬として欧州連合(EU)が生まれた。アジアを中心とした環太平洋経済連携協定(TPP)は、自由貿易という点のみで結びついている点で参加する上でのハードルは低いと言える。次の正式承認国がどこになるのか興味深い。中国は台湾の参加を阻害する目的で手を上げただけであり、本気で参加する意図はないだろうが、半導体で世界をリードする台湾が加盟することになれば、貿易種目が多様になって経済効果も大きく面白いだろう。そうなれば中国の反発は大きいだろうが、参加対象を「国と地域」としている以上、本来、台湾の加盟に問題はないはずだ。今後、中国の経済的・政治的・軍事的な影響力が低下すれば、台湾の加盟も現実味を帯びてくることになる。

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2023年3月31日「TPP、英国の新規加盟を加盟各国が合意!」

3/31、環太平洋経済連携協定(TPP)参加国の11か国は、オンラインの会議で英国の新規加盟を合意したと発表した。英国が加わることでアジアから欧州へと枠組みが広がり、対米や対中経済包囲網の効果は格段に強まることになる。

GDPの合計額は、これまでの11.7兆ドルから14.8兆ドルへと増え、世界全体のGDPに占める割合は12%から15%へと高まる。

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2023年3月31日「政府の少子化対策たたき台公表!」

3/31、政府は少子化対策のたたき台を公表した。児童手当の所得制限撤廃や支給を高校生までに延長、出産費用の保険適用、保育所の拡充、働き方改革など多岐にわたっているが、少子化対策としての効果の程は、甚だ疑問だ。少子化対策なのか育児・教育支援なのか、目的が曖昧なのが原因で、喫緊の課題が少子化とすれば、少子化対策だけにフォーカスしてそこに全力を注ぐべきだろう。そもそも夫婦で子ども2人だと出生率は低下する。一組の夫婦が3人以上生んで初めて増加に転じる。出産費用が保険適用されるとか、支給期間が3年延びるとか、子どもを3人以上生むというモチベーションに繋がるとは到底思えない。むしろ、財政のことを考えると、2人までの子どもには不支給で、3人目には月額10万円くらいのインパクトある額を支給するなど思い切って少子化対策だけに絞るべきだろう。

不妊治療の保険適用や補助も、補助的に押し上げる効果はある。また、保育所なども保育士の待遇改善や企業内でも保育施設の付帯を進めるなど政府が主導できることはたくさんある。

いずれにせよ、あれもこれもと様々な目的を盛り込んで八方美人となってしまうと、肝心の少子化対策はなし得ないことを肝に銘ずるべきだ。

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2023年1月27日「新型コロナ5類へ、5月8日の移行決定!」

1/27、政府は新型コロナウイルスの感染法における分類を、季節性インフルエンザと同等の5類へと引き下げることを決定した。今年5/8の実施を予定している。                これにより、特措法やまん延防止法等重点措置はなくなり、これまで感染者や濃厚接触者へ求めてきた外出自粛は不要となる。飲食店やイベント等への制限や要請もなくなり、社会経済活動は平常時へと戻る。医療機関においてもコロナ疑いの患者も、原則すべての一般医療機関でできるようなって、医療機関・患者双方ともに負担が減って利便性は大幅に向上することになる。  これまでは発熱外来と呼ぶ一部の医療機関が担い、医療現場の逼迫を招いて患者も入院や受診が即時できない医療難民も作り出してしまっていた。経済活動と医療がようやく正常化することになる。これまでの最大の問題点は、感染者だけではなく濃厚接触者も追跡管理し、クラスター発生とみなされると店舗やクリニック等医療機関も一定期間閉鎖に追い込まれ、経営に大打撃を与えてしまうことにあった。5類移行で、経営者に与える心理的好影響も大きい。

ここにきて5類への移行が可能となったのは、ウイルスが変異を続け感染力は上がったものの重症化が抑えられるようになってきたということが最大の要因だ。ワクチンや治療薬の開発も寄与している。ただし、季節性インフルエンザが冬期に限定された季節の風物詩なのに対して、新型コロナは季節を問わず一年中まん延している点が異なる。これまでもマスク着用は強制ではなく要請に過ぎなかったが、これからはその要請も一部を除き撤回されるだろう。しかし、インフルエンザ流行期の予防にマスク着用者がいるように、今後はマスク非着用と着用者が1年中混在する世界となるのではないだろうか。

5類移行に伴う懸念点もある。同じく1/27に世界保健機構(WHO)が、新型コロナウイルスを原因とした死亡例が急増しており、直近では世界全体の死者数の半数以上が中国からだったと公表した。テドロス事務局長は、2022年10月時には1週間で1万人を下回っていた死者数が同年12月から増え始め、先週は4万人近い死亡例が報告されたと述べている。過去8週間の累計死亡数は17万人を超えたが実際の人数は確実にもっと多いとの見解も示しており、中国の公表する数字には懐疑的だ。中国の新型コロナ対策の解除が死者数の急増に繋がっているのは確かだが、今後致死率の高い変異型ウイルスが出てこないかが最大の懸念だ。

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2023年1月12日「日米、外務・防衛担当閣僚会議開催!」

1/11(日本時間1/12)、日米両政府はワシントンで外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)を開催した。共同文書では、自らの利益の為に国際秩序を作り変えようとしているとして中国による最大の戦略的挑戦と明記している。日米両国は、台湾海峡の平和と安全の重要性を確認し、台湾に近い南西諸島の防衛強化策として日米が共同使用する基地や空港、港湾といった施設の拡大方針も共同文書には盛り込んだ。

また、米国は対中抑止と有事対応を強化する為に沖縄県駐留の海兵隊を改変し、2025年までに離島防衛を担う即応部隊「海兵沿岸連帯(MLR)」を新設する方針を打ち出した。       侵攻を受けた際に、最前線の島に残って対艦ミサイルなどで戦い、そこで侵攻を食い止める役割を担う。これには、中国が領有権を主張する尖閣諸島も含まれている。

米国による対日防衛義務を宇宙空間まで拡大することが盛り込まれたことも特筆すべき点だ。 日本の人工衛星が攻撃されれば、日米が反撃することを申し合わせた。           共同文書では「宇宙への攻撃は同盟の安全に対する挑戦だ」とまで表現している。

日本がこれまでの専守防衛から一歩踏み出し、反芸能力の保有を決めたことについて米国は強く支持し、今後は米国から提供される衛星情報を基に、発射拠点を攻撃できるようになる。

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2022年12月21日「日銀、実質利上げへと政策転換!」

日銀は12/19~12/20の金融政策決定会合で、長期金利の上限を0.25%から0.5%へと引き上げることを決定した。事実上の利上げを意味する。アベノミクスの象徴だった異次元緩和は10年目で転換期を迎えたことになる。米連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切り、日米の金利格差が拡大したことで10月下旬には1ドル151円台まで円安・ドル高が加速したことに加え、ロシアのウクライナ侵攻の紛争長期化に伴う資源高も重なって消費者物価指数は3%台半ばまで上昇し、賃金が抑制された中で家計の負担感は増大したことが契機となった。

12/20の決定を受け、10年物金利は一時0.460%へと7年5か月ぶりの高水準に高騰した。連続指し値オペの利回りも0.25%から0.5%へと引き上げ、長期国債購入額も毎月7.3兆円から9兆円へと拡大することとしたが、人為的に抑え込んでいた金利に上昇圧力がかかれば政府の利払い負担は増えることになる。政府債務の名目国内総生産(GDP)比は、12/20時点ですでに258%へと達している。新型コロナウイルス禍で大型予算を編成し続けてきた結果、税収で返済する必要のある普通国債の残高は1000兆円規模に膨張した。仮に金利が1%上昇すれば国債の元利払いに充てる国債費は3.7兆円上振れすることになる。日本国債は大半が国内で消費されており、その多くを日銀を始めとした金融機関が保有している。金利上昇時における国債の下落リスクに、大手都市銀行は何年も前から動いてはいるが、一方で地銀の動きは鈍い。国債が暴落するような事態となれば、金融機関の破綻連鎖による決済機能の麻痺という最悪のケースも想定される。

住宅ローンの固定金利はすでに上昇傾向にあるが、短期の政策金利はマイナス0.1%に据え置かれている為、当面変動金利への上昇圧力は見られない。しかし、このまま長期金利が上昇を続ければ短期金利も引っ張られて変動金利が大幅に上昇することもあり得る。そうなれば、住宅ローン破綻者が溢れる事態も想像に難くない。

日銀は金利の上限をコントロールする腹積もりのようだが、過去の歴史を振り返ってもインフレを支配下に置くというのは至難の業だ。世界でも金利の乱高下が目立つようになってきている。英国では財政への懸念をきっかけに長期金利の上昇に歯止めが掛からなくなった。日本でも長期金利の上昇が加速する可能性を否定できない。                      10年にわたる異次元緩和という前代未聞の実証実験を続けた「黒田バズーカ」は、円高修正と株価上昇を実現したものの、10年間の潜在成長率は0.9%から0.2%へと低下し、1人当たりの国内総生産(GDP)も、主要7か国(G7)でイタリアに抜かれて最下位に転落した。

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2022年10月23日「中国、台湾独立反対を第20回党大会で決議!」

10/22、中国共産党第20回党大会にて、「台湾独立に断固として反対し抑え込む」という言葉を党の憲法に相当する党規約を改正して盛り込むことを決議した。              党大会初日の10/16に習近平国家主席は「決して武力行使の放棄を約束しない。必要なあらゆる措置を持ち続ける」と、武力での台湾統一の可能性を示唆していた。

習主席の独裁体制が確立されて以降、台湾の統一のみならず西太平洋を支配下に置く覇権主義を隠さなくなってきたが、米国に次ぐ経済力と軍備を整備できたことで自信を得たことに加え、不動産や金融の破綻も表面化して景気の先行きに不安を抱えていることから、実行のタイミングを計っていると考えられる。ロシアによるウクライナ侵攻は、中国での冬期オリンピック前に両国で綿密に打ち合わせをした節もあり、当初の計画通り短期間でウクライナをロシアが占拠できてそれをクリミア併合時のように国際社会が黙認するような結果となれば、続いて中国が台湾進攻へと動くことも考えられるし、ウクライナを米欧の国際社会が見放した現実を目の当たりにすれば、現在対抗姿勢を見せている台湾が統一に前向きとなることも十分に期待できる。ウクライナの抵抗によって、ロシアの侵攻が長期化・泥沼化し、国際社会の中で孤立してしまったことは中国にとっても大いなる誤算といえるだろう。苦戦が続くロシアのプーチン大統領としては、中国に東アジアでの紛争を起こしてもらい、米欧の注意を分散したいところではあろうが、中国としては慎重に動かざるを得ないだろう。中国の動きを封じ込める為には、ユーロ圏のリーダーであるドイツのショルツ首相は、すでに中台問題で中立を保つことを明言しており、米国や英国と近隣国の日本に加え、中国と国境を接する大国であるインドの積極的な関与が不可欠だ。  

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2019年7月13日「中国、環境車規制の中でHVを低燃費車へ修正!」

中国政府は環境車規制の中で、ガソリン車と同等としてきたハイブリッド車(HV)を「低燃費車」とみなす修正案の検討に入った。中国は、今月から世界で最も厳しい基準とされる新たな排ガス規制を導入するなど、大気汚染の解消と自動車業界の構造改革を急ぐ。電気自動車(EV)の普及に限界がある中、HVを含め環境対策を強化する。中国政府の方針転換は、HVに強みを持つトヨタ自動車など日系メーカーの追い風となる。

新エネルギー車を一定比率、生産することを義務付ける「NEV規制」は2019年に始まった。 ガソリン車やディーゼル車などの製造販売台数を基準に、複雑なポイント制度で新エネ車の製造販売台数を算出する。自動車行政を担当する工業情報化省はこのほど、その修正案を公表した。 8月上旬までメーカーや専門家の意見を聴取し、今年中の決定を目指す。これまでHVもガソリン車も同評価で、19年にHVやガソリン車を100万台製造販売するメーカーについては、EVを2万台作るよう求められた。修正案ではガソリン車はEV製造義務が約2万9000台に増え、HVならEVを6000台作れば済むようになった。また、水素を燃料に使う燃料電池車(FCV)の普及を目指すことも修正案に盛り込まれた。トヨタは同分野で、相次いで中国企業と提携している。

*関連記事                                                    2019.4.23「日本、温暖化ガスゼロ戦略」2018.9.14「水素エネルギー、独が日本猛追」2018.6.21「経済産業省、セルフ式水素ステーション解禁」2018.2.15「2030年EV化、インド撤回」2017.12.26「FCV促進のため水素基本戦略を決定」  

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2019年6月27日「リバースモーゲージにオリックス参入!」

オリックス子会社のオリックス・クレジットは、自宅を担保に老後の物件購入やリフォーム費用を貸し出す「オリックス リ・バース60」を発売することになった。独立行政法人住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージ型住宅ローンで、融資した個人の死亡時に担保価格が残債を下回っても、相続人に請求しないノンリコース(非遡及)型のみを取り扱う。 グループのマンション大手、大京などを通じて提供する。郊外の自宅を担保に、都市部のマンションに移り住みたいといった高齢者の需要に対応する。60歳以上なら利用でき、存命中は金利のみ支払う。死亡時に担保を売却するなどして元金を回収する。

リバースモーゲージとは自宅を担保に融資を受け、生存中は利息のみを支払い、死後に自宅を売却して残債を一括返済する方法だ。フランスやアメリカで発達し、日本でも大手金融機関や地方自治体が、1981年以降取り扱いを拡大してきた。ただ担保評価が厳しく希望通りの融資が受けれなかったり、清算時の売却額が融資額を下回ってしまうリスクなどから全体の融資残高は1千数百億円に留まってきた。ところがここにきて、住宅金融支援機構が金融機関と保険契約を結んで融資する新タイプのリバースモーゲージ「リ・バース60」が伸びてきた。2018年度融資額は44.3億円で、前年度比521%に達する。リ・バース60も自宅を担保に融資し、最後は担保売却で返済するが、死後の手続きが従来型と異なる。機構が保険金で金融機関に残債を払うため、金融機関ではなく機構が担保価値の下落リスクを負う。民間のリバースモーゲージは担保住宅の地域を都市部に絞るなどして下落リスクを抑える例が多いが、リ・バース60は全国の物件を幅広く引き受けている。リ・バース60は2009年に始まったが、注目され始めたのは17年のノンリコース型の導入後だ。一般的なリバースモーゲージは担保物件の売却価格が残債に満たない場合、相続人が残債を返済する必要があるが、ノンリコース型だと相続人が返済する必要はない。リ・バース60拡大の起爆剤となった。ノンリコース型はリコース型に比べて機構が負うリスクが大きい分、金融機関が払う保険料も高い。それでも、18年7~9月の融資実績の89%をノンリコース型が占めており、利用者の支持を集めた。ただ、これまでの民間等でのリバースモーゲージはリフォームなどのほか生活費に充てる、いわば自宅に住み続けながら老後の生活資金を確保する目的で利用できたが、リ・バース60では建て替えや住宅ローン返済などの住宅関連に限られている。さらなる普及のためには、欧米なみにノンリコース型で使途を限定せず、生活費として年金のように使えることが求められる。  

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2019年6月7日「日本の出生率、3年連続で低下!」

6月7日、厚生労働省は2018年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数)が、前年より0.01ポイント下がって1.42となったことを発表した。低下は3年連続で、政府が2025年度までに目指す子育て世代が希望通りに子供を持てる「希望出生率」の1.8からは逆行している。   2018年の出生数は前年比2万7668人減の91万8397人となり、過去最少を更新した。     出生率は2005年に記録した1.26に比べると高い水準にあるが、女性人口は減少しており出生数は3年連続で100万人割れとなった。出生率の低下が止まらない原因として人口減少と出産年齢の高止まりが上げられる。25~39歳の女性人口は1年間で2.5%減少し、第1子の出産年齢は30.7歳で過去最高水準にある。

政府が少子化対策を始める契機となったのが、1989年の「1.57ショック」だ。この年、合計特殊出生率が過去最低の1.57を記録した。これまで行ってきた少子化対策は、①経済的支援、②仕事と子育ての両立のためのインフラ整備と制度の策定、③結婚支援、等が挙げられる。これまで児童手当や幼稚園・保育園の無償化といった経済支援、待機児童ゼロを掲げての保育施設の拡充、一定規模の企業に子育て支援計画の作成を義務付けた「次世代育成支援対策推進法」の制定、地方自治体の婚活パーティーなど官製婚活や最大30万円を支給する結婚・新生活支援の補助金などを行ってきた。2010年代前半までの出生率上昇など一定の効果はあったが、その後息切れして抜本的な対策とはなっていない。1人目の児童手当をゼロに、その分を2人目以降のインセンティブを大きくするなど思い切った対策が必要だ。不公平などといった反発も大きいだろうが、少子化対策という一点に絞った最も効果的な施策を望みたい。移民で労働力を補充する対策は簡単ではあるが、欧米先進国の例を見ると問題も大きく、日本の国民性には特に馴染まないものと考えられる。出生率の低下が進むと労働力が減少する。経済力が低下するだけではなく、年金財政にも深刻な影響を与えかねない。迅速かつ効果的な対策が求められている。  

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2019年5月10日「国の借金、1103兆円で過去最大!」

5月10日、財務省は国債や借入金を合計した「国の借金」が、2019年3月末時点で1103兆3543億円だったと発表した。18年度末と比べて15兆5414億円増加している。年度末の残高は3年連続で過去最大を更新し続け、歳出の抑制が課題となっている。

満期10年以上の長期国債(超長期を含む)の残高が同32兆円増え、674兆円になった。    政府は国債の新規発行や借り換えの際、満期が長いものを増やしている。通常は長期ほど金利は高いが、低金利のうちに発行すれば将来の利払い費が抑えられると判断してのことだ。  

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2019年4月23日「日本、温暖化ガスゼロ戦略!」

4月23日、日本政府は排出する温暖化ガスを今世紀後半の早い時期までに、実質ゼロにする戦略をまとめた。二酸化炭素を出さない水素エネルギーの製造コストを2050年までに10分の1以下に引き下げ、燃料電池自動車(FCV)や水素発電を広く普及させる。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に基づき、政府は戦略を6月中旬に国連に提出する方針だ。パリ協定は産業革命前より気温上昇を2度未満に抑える目標を掲げ、各国に戦略の策定と提出を求めている。      主要7カ国(G7)で提出していないのは、日本とイタリアだけとなっている。政府は戦略を6月に大阪で開く20カ国・地域(G20)首脳会議前までに提出する方針だ。

水素は利用時にCO2を出さないため、温暖化ガス排出ゼロに向けて重要なエネルギーとして位置付けた。普及には安価で大量の水素供給が重要だとして、製造コストの達成目標を掲げた。   2030年には水素1立方メートルあたり30円に、50年には同20円まで引き下げ、CO2の排出ゼロを目指す。FCVの普及とあわせて水素ステーションを増やす。家庭用燃料電池(エネファーム)の利用も広げる。水素製造に必要な水電解技術や、液化して運ぶ輸送技術なども開発を進める。このほか、エネルギー収支ゼロ住宅や再生可能エネルギーの普及、CO2を資源として活用する研究開発なども加速する計画だ。  

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2019年3月28日「韓国、来年から人口減少へ!」

3月28日、韓国統計庁は将来人口推計を発表し、人口に占める65歳以上の高齢者の割合が2065年に46%に達して、経済協力開発機構(OECD)加盟先進国の中では日本を抜いて高齢化率1位になると推定された。総人口は早ければ今年の5165万人をピークに、減少に転じることになる。

2月27日に発表された1人の女性が生涯に産む子供の数にあたる合計特殊出生率は0.98と、データがある1970年以来初めて1を割り込んでいた。2018年に生まれた子供の数は前年より3万人あまり少ない約32万7000人で、過去最少を記録している。少子化が進む日本よりも急速に出生率が低下しており、世界でも最低水準となった。2017年の出生率で日本の1.43、米国の1.76と比べても極端に低い水準にある。1980年に2.82だった韓国の出生率は、90年に1.57、17年に1.05と急激に低下を続けている。背景には若者の経済不安がある。韓国では2010年頃から「恋愛、結婚、出産」をあきらめる「3放世代」という言葉が使われ始めた。財閥系の大企業と中小企業の待遇格差や、不安定な労働市場に不安が広がったためだ。経済的事情から子供を持つことに慎重な家庭が多いとみられる。急速な少子高齢化は経済の活力低下につながる。現在の潜在成長率は2.7~2.8%だが、2030年以降は潜在成長率が1%台まで下がる可能性がある。  

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2019年1月9日「東日本重粒子線センター2020年秋、治療開始へ!」

山形大学医学部が建設中の東日本重粒子線センターの本格的な治療開始が、2020年秋になる見通しだ。腫瘍に重粒子を照射する治療施設で、大型加速器を45メートル四方の建物にコンパクトに収める設計は、過去に例がないという。従来はサッカー場が収まるくらいのスペースを必要としていた。

建物の建設と並行して大型装置を順次搬入し、2020年春から一部の治療を始める。重粒子線センターは佐賀県や大阪府などに続き、全国7カ所目。国内外から患者を集める医療ツーリズムにもつなげる。副作用が少なく、短期間に集中して治療できる重粒子線治療は海外からも患者を誘致しやすく、すでに群馬県が重粒子線施設を保有する群馬大学とタイアップして、がん治療と観光を兼ねた医療ツーリズムを海外に向けて発信している。  

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2018年12月30日「TPP11、30日発効へ!」

米国を除く11カ国の環太平洋経済連携協定「TPP11」が30日、発効した。来年2月1日には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効する。貿易戦争を繰り広げる米中を横目に、世界の国内総生産(GDP)の4割弱を占める巨大貿易圏が動き出す。保護主義の連鎖を防ぐ試金石となる。

TPP11は日本を除く10カ国が最終的に、ほぼ全ての関税をなくす。日本も工業製品の100%、農林水産品の82.3%の関税を最終的に撤廃する。日欧EPAでも日本側が94%の品目で、EU側が99%の品目で、それぞれ関税を撤廃する。効果は大きい。国際貿易投資研究所の高橋俊樹研究主幹によると、日本からの輸出にかかる関税は、カナダやオーストラリアなどの5カ国だけで1年目に約20億ドル減る。他の10カ国からの輸入にかかる関税についても、1年目だけで約10億ドル減ると試算する。

今後はTPPへの加盟国拡大を目指す。すでに台湾は参加の意向を表明し、タイも2019年度の参加で準備を進めている。EU離脱が予定されている英国も関心を示すなど拡大傾向にはあるが、最終的には米・中の2大国の動向が注目される。  

アメリカ国旗

2018年12月21日「契約社員の皆勤手当不支給、差し戻し控訴審で違法判決!」

同じ業務内容なのに正社員と契約社員で賃金や手当が異なるのは違法として、物流大手「ハマキョウレックス」の運転手が、格差の是正を求めた訴訟の差し戻し控訴審判決が21日、大阪高裁であった。田中俊次裁判長は皆勤手当の不支給を違法と認め、同社に32万円の支払いを命じた。

同社の賃金体系が、有期契約を理由とする不合理な労働条件を禁じた労働契約法20条に違反するかどうかが争点だった。田中裁判長は判決理由で、皆勤手当の趣旨を踏まえ、契約社員への不支給は「不合理」と結論付けた。また、同条の施行時までに、正社員と契約社員の諸手当について「均衡の取れた処遇とするように取り組むべき注意義務違反があった」と指摘した。同社は「判決文を確認して対応する」としている。

差し戻し前の大阪高裁は2016年7月、無事故手当や給食手当など4種類が契約社員にも支払われるべきだと指摘。最高裁は2018年6月、大阪高裁判決を支持し、皆勤手当について支給要件を満たすか検討すべきだとして、審理を差し戻していた。  

アメリカ国旗

2018年12月7日「国産手術支援ロボット、2019年度にも誕生予定!」

川崎重工業とシスメックスが共同開発する国産第1号の手術支援ロボットが、2019年度にも誕生する。外科医の目や手となり、緻密で安全な手術が可能になる装置で、20年近く市場を独占してきた米インテュイティブサージカルの「ダビンチ」に対抗する。

1999年に発売されたダビンチは、患者の腹部などに複数の穴を開けて手術器具を挿入する内視鏡手術を支援する。外科医が3次元画像を見ながら、ロボットアームに取り付けたメスなどを動かす。手術器具の関節が360度動くため、狭い空間でも作業が可能。手振れ防止機能も備え、緻密な手術ができる。出血が減り術後の回復も早まるなど、患者にとってのメリットも大きいとされる。2017年度末までに世界で約4500台が導入され、2018年手術数は100万件に達する見通し。日本では大規模病院を中心に約300台が導入済み。

米アライド・マーケット・リサーチは、世界の手術ロボットの関連市場は2024年に、約11兆円に達すると予測。次世代通信規格「5G」が普及すれば遠隔手術などの市場も広がる可能性があるだけに、ダビンチに挑戦する動きが活発になっている。ダビンチが保有する手術関連の特許が切れ始めたこともあり、各地で参入をもくろむ企業は増えている。海外ではグーグルがジョンソン・エンド・ジョンソンと立ち上げた米バーブ・サージカルが2020年頃の発売を目指し、手術支援ロボットを開発中だ。  

アメリカ国旗

2018年11月29日「元徴用工、三菱重工も最高裁で敗訴!」

韓国大法院が29日、新日鉄住金に続き三菱重工に対しても、元徴用工らへの賠償支払いを命じる判決を確定させた。下級審でも同様の判決が続きそうで、日本企業に「歴史」の償いを迫る韓国司法の判断は止まらない。

29日に、韓国の裁判所は係争中の3訴訟に判決を言い渡した。元徴用工と元朝鮮女子勤労挺身隊員が三菱重工を訴えた2つの上告審は、大法院が同社の上告を退けた。午後には元徴用工の遺族3人が新日鉄住金に損害賠償を求めた控訴審で、ソウル中央地裁が同社に1億ウォンの支払いを命じた一審判決を支持し、同社の控訴を棄却した。

元徴用工の支援団体によると、日本企業を相手取った係争中の訴訟は残り12件。12月5日と14日にも、元挺身隊の女性らが三菱重工業に賠償を求めた二審判決が、それぞれ予定されている。  

アメリカ国旗

2018年10月30日「韓国最高裁、元徴用工へ賠償確定!」

第二次世界大戦中に強制労働をさせられたとして韓国人4人が新日鉄住金に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し上告審で、最高裁にあたる韓国大法院は30日、同社の上告を退ける判決を言い渡した。4人に請求全額の計4億ウォンの支払いを命じたソウル高裁判決が確定した。日本政府は、元徴用工の問題は1965年の日韓請求協定で解決済みとの立場で、同社も同様の主張をしたが認められず、最高裁は公判で個人の請求権は協定では消滅していないとの判断を示した。ただ判事13人のうち2人は、協定によって「個人の請求権は行使できなくなっている」と、判決とは異なる見解を述べている。韓国の元徴用工支援団体によれば、他に14の同様の訴訟で日本企業計約70社が被告となっている。30日の最高裁の判断によって、これらの訴訟でも日本企業の敗訴が相次ぐ可能性が高まりそうだ。

判決が確定した30日、安倍首相は「国際法に照らしてあり得ない判断だ。日本政府としては毅然と対応していく」と発言している。日韓両国は1965年の国交正常化の際に結んだ請求権協定で、請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と確認した。韓国の歴代政権も対日請求権は認められないとの立場で、盧武鉉政権下では問題解決の責任は韓国政府が負うべきだとの見解をまとめている。日韓請求権協定では、日本からの経済協力は無償供与が3億ドル、有償は2億ドル。その中には個人の賠償も含まれ、韓国政府が責任を持つとされた。無償分だけでも当時の韓国の国家予算に匹敵する巨額の支援で、その後の韓国経済の急成長を支えてきた。

元徴用工による類似の訴訟が多発するであろうことは想像するに難くない。さらに世論や政府の意向におもねる韓国司法のあり方では、徴用工以外の当時日本企業で働いていた韓国人全員が対象ともなりかねず、また子孫代々が受け継ぐとして永久かつ無限大に続くこともあながち荒唐無稽とも言い切れない状況だ。先に、朴槿恵政権下で徴用工訴訟を迅速に対応しなかったとしてソウル中央地検は、大法院付属機関の元判事を逮捕している。こうした状況下での裁判であれば、判決内容は十分に予測できるものであった。  

アメリカ国旗

2018年9月24日「CAR-T療法の効果を高める研究相次ぐ!」

体を守る免疫の仕組みを利用して、がんを攻撃する新しいタイプのがん治療「CAR-T療法」の効果を高める研究が相次いでいる。慶応義塾大学と第一三共は、疲弊した免疫の働きを活発にする手法を見つけた。東京大学などは、がんを倒す細胞の寿命を延ばし、増えやすくする技術を開発した。治療効果が持続して、コスト削減につながる。肺がんや大腸がんなどの固形がんの再発予防などにも役立つ可能性がある。

「CAR-T療法」とは、がんを攻撃する「T細胞」と呼ぶ免疫細胞を患者本人から取り出し、遺伝子を改変して攻撃力を高めたうえで薬にし、体内に戻してがんを退治する治療法のこと。 スイスの製薬大手ノバルティスが2017年に、米国で急性リンパ性白血病を対象とした医薬品「キムリア」で世界で初めて製造販売の承認を得た。従来の治療法では数ヶ月しか生きられない血液がん患者のうち、7~9割でがん細胞が消え、1年以上延命して注目を集めた。外科手術や抗がん剤、放射線治療に続く新しいがん治療法とされる。ただ遺伝子導入にウイルスを使うため、安全性検査や品質管理のコストが嵩んでしまい、世界に先駆けて承認された米国では1回の治療費が約5000万円と高額であることが難点となっている。また、がん細胞がいったん減っても、1~2年以内に増えることも報告されている。投与した免疫細胞が疲弊するためと考えられている。

こうしたコスト面や治療効果の向上についても、研究が進んできている。信州大の中沢洋三教授や名古屋大の高橋義行教授は、ウイルスの代わりにたんぱく質の酵素を使い、細胞へ遺伝子を導入する技術を開発した。安全性の検査などを簡略化でき、製造コストを20分の1に抑えられ、1人あたり数百万円で治療できる可能性がある。この技術を使い、名古屋大は2月から子供に多い急性リンパ性白血病で臨床研究を始めた。1~15歳を中心とする12~24人が対象。安全性と効果を確かめる。2018年度中にも製薬会社が臨床試験を始め、厚労省へ2年以内の申請を目指す。   慶応大学の吉村昭彦教授と第一三共は、体内で疲弊した免疫細胞の攻撃力を再び高める技術を開発した。がん細胞は免疫細胞の攻撃で大半が死滅しても、免疫細胞が疲弊すると再び増えてがんが再発する。CAR-T細胞の攻撃力を長期間維持する治療法が普及すれば、治療効果を大幅に高められる。マウスの実験では、従来のCAR-T療法では12週間後までに8割以上が死ぬところが全て生き残るようになり、白血病細胞が消えた。今後は固形がんも治療できるように、免疫細胞を改良して実用化を目指す。  

アメリカ国旗

2018年9月19日「がん早期発見、複数企業が事業化競う!」

分析機器・医療機器メーカーが相次いでがんの早期発見サービスを事業化する。島津製作所は19日、血液から大腸がんの可能性を早期に発見する検査の検証試験を、京都の御池クリニックの人間ドックを対象に、10月から開始すると発表した。血液に含まれるアミノ酸や脂肪酸など8種類の物質を測定し、一定量を超えた場合、9割の確率でがんの可能性が高いと判断できるという。 スクリーニングにかかった場合、精密検査を促す。内視鏡を使うがん検査などに比べて利用者への身体的負担は格段に軽減される。2019年中の実用化を目指し、将来は全国展開をはかる。

日立製作所が4月から始めた実証実験では、尿に含まれるアミノ酸や脂質といった代謝物質約4000種類の中から、がんの目印となる物質を数種類抽出して分析する。特徴の違いでがんの可能性を検出する。乳がん、大腸がん、胆道がんなどを見分ける技術を開発しており、実証実験では検体の搬送方法やコストを確かめる。2020年代初めの実用化を目指す。東レは血液から13種類のがんを同時に見つける検査薬を開発し、2020年を目処に発売する。血液中に分泌する核酸を特殊なチップで見出し、異常を調べる。必要な血液は1滴で済み、乳がんなどの可能性を95%以上の確率で検出できる。

技術以外に普及の鍵を握るのが料金だ。島津が今回始めるサービスは自由診療で、検査費は約2万円。東レのケースも費用は2万円前後の見通しだ。将来的に保険適用を目指し国などへの申請を検討しており、1万円程度に下がる可能性もあると島津は予測する。患者の体を撮影して病気を診断する画像診断機器でも、がんの早期発見の技術が広がっている。富士フイルムが開発するソフトウェアでは、CTで撮影した輪切りの画像を3次元に加工し、AIで分析。臓器のの形から肺がんなどの発見につなげる。医師の目では見つけにくい小さながんを発見できる可能性がある。国などの承認を得て2019年度の実用化を目指す。NECは内視鏡の映像を処理し、がんを検出する技術を開発。2019年度に臨床試験を始める。AIを使う顔認証技術を応用し、見た目の特徴からがんを検出する。オリンパスは開発中の内視鏡の新製品に、AIを活用した病気の診断支援技術などを搭載する見込みだ。がんの早期発見へのニーズは大きい。患者にとっては早い分、治療法の選択肢が広がり、治療の可能性が高まる。2015年に3兆5889億円と、この10年で約1兆円増えた国内のがん治療費の抑制にもつながる。  

2016年05月31日 「医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画を閣議決定!」

2018年9月17日「重症患者、遠隔で診療支援!」

厚生労働省は複数の集中治療室(ICU)と中核となる病院をつなげ、遠隔で診療を支援する仕組みづくりに乗り出す。電子カルテや血圧など患者の状態がわかるデータを中核施設に送り、専門の医師がそれぞれのICUに助言する。先行する米国では医療の質が向上し、在院日数が3割程度減ったとされる。国内で導入が進めば、40兆円を超す国民医療費の伸び抑制につながると期待されている。

ICUは急性心不全などの重症患者を治療するため、医師や看護師の負担が重い。医療費も嵩み治療の質を維持しながら、どう効率化するかが課題となっている。新たな取り組みでは、主要な大学病院や総合病院などの施設を中核として位置づける。中核施設にいる専門家が、他のICUに入っている患者の状態を把握できるようネットワークで結ぶ。ICUで患者の容態が急変する兆候を捉え、現場にいる医師に対して適切な対処法を素早く助言する。中核施設とICUをウェブカメラでつなぎ、患者の状態を見ることもできるようにする。普及を目指すのは「Tele-ICU」と呼ぶ仕組みで、遠隔医療の一つ。現在は昭和大学病院が導入している。厚労省はネットワークの構築に必要な施設設備費などで、2019年度に助成制度を設ける方針。2019年度予算で5億5000万円を要求しており、初年度の助成は大学病院など数箇所になる見通しだ。

厚労省の調査によると、ICUの病床数は2014年時点で国内に約6500床ある。一方、日本集中治療医学界が認定する専門医は2016年時点で1400人余りとみられる。今後も高齢化で重症患者は増える見込みだが、豊富な経験を持つ医師をすべてのICUに十分に配置することは難しい。ネットワークでつなぐ仕組みが普及すれば、医師の数を大幅に増やさなくても医療の質向上が見込める。米国ではネットワーク導入後、夜間帯の入院患者の在院死亡率が16.1%から12.7%に下がったという。医師の少ない夜間帯でも、昼間と同じような処置ができるためだ。在院日数も14.3日から9.6日に短縮された。日本では入院にかかる費用が医療費全体の4割弱を占める。入院する期間が短くなれば、その分医療費も削減できることになる。  

アメリカ国旗

2018年9月14日「水素エネルギー、独が日本猛追!」

水素を使って環境負荷の少ない社会を実現する「水素社会」の実現をドイツが急いでいる。16日に水素と空気で電気を起こして走る燃料電池鉄道の世界初の営業運転を始める。旭化成はドイツ西部で、再生可能エネルギーから水素を製造する設備の事業化を目指す。水素社会は日本が世界に先駆けて推進するが、二酸化炭素輩出削減に官民挙げて取り組む独政府が追っている。

鉄道車両大手の仏アルストムは独北部ザルツギッターの工場で、16日に営業運転する燃料電池列車を製造した。青い車両の外装には水素を表す「H2」の文字がある。燃料電池列車は車両の上に燃料電池と水素タンクを備える。燃料電池で水素と空気中の酸素から電気を作り、モーターを回して走る。走行中に輩出するのは蒸気と水だけで、環境負荷が低い。アルストムが開発に着手したのは2014年。わずか4年で商用化できたのは独政府の後押しが大きかった。

水素社会に向けては日本が世界をリードしてきた。水素を燃料にする燃料電池車(FCV)でトヨタ自動車が世界初の量産車「ミライ」を2014年に発売。2017年には大容量の燃料電池を備えたバスが初めて運行した。燃料電池列車については鉄道総合技術研究所が2001年から開発するが実用化に至っていない。自動車分野では乗用車に先駆けて普及が始まりそうな燃料電池バスを、西部ケルン市が2019年春に30台導入する。日本では東京都が2017年に2台、翌年に3台を追加導入し、2020年までに100台を目指している。ダイムラーやアウディなどの独自動車大手は燃料電池車の開発に取り組んできた。ただ直近では電気自動車(EV)に経営資源を振り向ける。まずはルートが固定されている鉄道やバスの普及を目指し、水素インフラの整備を進める考えだ。  

アメリカ国旗

2018年8月17日「トルコ国債格下げ、危険水域に!」

8月17日、米格付け会社S&Pグローバル・レイティングスは、トルコ国債を格下げしたと発表した。外貨建て長期債務格付けは「BB-」とすでに投機的水準にあったが、さらに1ノッチ下がり「B+」となった。自国通貨建て長期債務は格付けは「BB」から「BB-」へとやはり1ノッチ引き下げられている。トルコ通貨リラの急落は財政に悪影響を及ぼすと指摘。2019年に景気後退に陥る可能性があるとした。トルコリラの急落が債務を抱えた企業の重荷となり、国内銀行の資金調達リスクが高まると指摘した。国の財政弱体化とともに金融システム危機に陥る可能性が高まれば、さらなる格下げもありうると警告している。

米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスも同日、トルコの長期債務格付けを「Ba2」から「Ba3」へ、やはり1ノッチ引き下げている。フィッチ・レーティングスも同日、トルコの最近の対応策について「不十分で通貨や経済の持続的安定につながる可能性は低い」との見解を発表。中央銀行の独立性を高めたり、経済成長率の軟化を政治家が受け入れたりすることが必要と指摘した。

トルコリラは格下げ懸念で発表前から下落していた。米国東部時間17日の朝方に一時、1ドル6.3リラまで売られたが、その後は同6リラまで値を戻し、格下げ発表自体への反応は薄かった。  

アメリカ国旗

2018年7月9日「英、デービスEU離脱担当相とジョンソン外相が辞任!」

7月8日、英国のデービス欧州連合離脱担当者が辞任を発表したそのわずか15時間後には、続けてジョンソン外相も辞任を表明した。メイ首相がEUとの関係を重視する「穏健離脱」の方針を打ち出したことに反発。メイ政権にとっては致命的な打撃となるのは避けられない。EUとの合意のないまま「無秩序離脱」を迎えるリスクが高まっている。

両氏の辞任の引き金となったのは、離脱後のEUとの経済関係の交渉方針を決めた特別会議だ。 10時間を超えるマラソン会議でメイ首相はEUとの「自由貿易圏」の創設や、工業製品の規格・基準をEUと共通化することを提案。ジョンソン外相らが主張するEUの単一市場・関税同盟からはきっぱりと撤退し、他国と自由貿易を拡大すべきだという「強硬離脱」ではなく、「穏健離脱」の方針をはっきりと打ち出した。強硬離脱派はメイ首相の方針では部分的に事実上、関税同盟に残ることになり「EUにさらなる譲歩を迫られやすい弱い立場に追い込まれる」として厳しく批判した。辞任後、ジョンソン前外相は声明で「メイ氏の方針のもとで英国はEUの植民地のようになる。主権回復にはつながらない」と指摘している。これに対して、メイ首相は9日、下院で「移動の自由を制限しながら雇用や経済を守る最善の提案だ」と述べ、穏健離脱の方針を撤回しない考えを強調。相次ぐ閣僚の辞任を受けて、与党内の強硬派からはメイ首相の責任を問う声も浮上。メイ首相のレームダック化が進んでいる。

ジョンソン外相の辞任が伝わった9日のロンドン外国為替市場でポンドが急落した。英メディアが辞任を一斉に報じると、対ドル相場は1ポンド1.33ドル台半ばから1.32台前半まで水準を切り下げた。  

2018年6月21日「経済産業省、セルフ式水素ステーション解禁!」

経済産業省は燃料電池車(FCV)の普及に向け、燃料を供給する水素ステーションの規制を緩和する。ドライバーが自ら水素を補充する「セルフ式」を解禁。一定の条件を満たせば監督者1人で運営できるようにして、水素ステーションの設置を促す。将来は無人化も検討する。次世代車を巡っては、海外では官民の電気自動車(EV)シフトが鮮明だが、経産省はECVにも将来性があるとみて後押しする。

21日に経産省内の検討会議で解禁を表明する。ステーションの運営会社は顧客の様子を監視するカメラや連絡が取れるインターホンを設置するなどの条件を満たし都道府県に届け出れば、ただちに「セルフ式」を設置できるようになる。これまでは高圧ガス保安法に基づき、資格と一定の経験を持つ「保安監督者」が2~3人程度の従業員を指導し、水素補充してきた。高圧ガスとして保管される水素の扱いを間違えれば事故につながりかねないためだ。経産省は監視カメラの設置などの安全対策を課すことを条件に、解禁を決めた。安全確保の装置が不十分な場合は、都道府県が改善を命じる。ドライバー側は、運営会社と契約を結び水素補充に関する一定の教育を受ける、などの要件を満たせば、セルフ式を利用できるようになる。

構造の簡単な電気自動車が登場したことで、これまで技術的格差が大きかった諸外国のメーカーや、異業種からも同じスタートラインで参入できるようになった。日本の自動車メーカーがこれまで維持してきた技術優位性が失われることになったのである。輸出国の日本にとって重要な主力産業である自動車メーカーを後押しする為にも、EVよりFCVを推し進めようとしている。インフラ整備が普及の鍵で今回のセルフステーション解禁につながった。現在の量産型ECV、トヨタの「ミライ」は価格が高額なこともあり、想定より普及が進んでいない。トヨタは2014年に「ミライ」を発売したが、1台700万円強と割高でインフラの未整備もあり、これまでの販売台数は5000台強にとどまっている。そこでトヨタは時期モデルを2020年以降に販売することを決めた。次期FCVは燃料電池車のシステムなどの製造コストを現行の半分以下に下げ、販売価格を抑える。次期FCVは世界販売で年3万台以上、国内で1万台以上を目指す。また、インフラ整備にも注力し、今年3月5日には、トヨタ自動車やJXTGエネルギーは水素ステーションを整備する新会社「日本水素ステーションネットワーク」を設立している。自動車、エネルギー大手の計11社が参加しており、世耕経済産業相は「水素社会実現の大きな一歩」と述べて、官民一体となっての水素ステーション普及を後押しする。水素ステーションの建設費は1箇所あたり4~5億円。その半分程度を国が負担し、現在92箇所のステーションを4年で倍増させる計画だ。  

2018年6月9日「心不全治療用ロボット、承認を受け販売予定!」

三菱商事グループの医療機器販社、日本メディカルネクスト(大阪市)は、日本で初めてロボットを使う心不全治療システムを2019年に発売することになった。このほど厚生労働省から製造販売承認を取得した。早期の保険適用を目指す考えだ。

医師が心欠陥手術を遠隔操作できるのが特徴。現在は熟練医師による手動での作業が必要だが、同システムを使えば治療の精度のバラツキを抑えられる。3年後を目処に10億円程度の売り上げを目指す。

脂肪が詰まる心筋梗塞などの心血管疾患では、医師が細長いカテーテルを通して手動で心血管を広げる治療が一般的で、国内の治療件数は年26万件。作業はミリメートル単位の精度が求められ高い技術が必要となり、エックス線で血管画像を撮影しながら治療するため、医師の放射線被爆のリスクも指摘されていた。日本メディカルネクストが販売するのは、カテーテルを操作するロボット治療システム「コーパスGRX」。医療ロボ開発のコリンダス・バスキュラー・ロボティクスが開発した世界初のロボット治療システムで、メディカルネクストが日本での独占販売権を取得した。システムは手振れ防止機能を有し、熟練医師と同様のカテーテル治療が可能となる。 医師は手術台から離れた場所で操作するため、放射線防護服も不要となる。日本メディカルネクストは、今後は国内の医療機関や学会と連携し、早期の普及を目指す構え。  

2018年6月1日「出生数、94.6万人で過去最少を更新!」

厚生労働省が1日に発表した人口動態統計によると、2017年に生まれた子供の数は前年よりも3万人余り少ない94万6060人となり、過去最低を記録した。1人の女性が生涯に産む子供の数にあたる合計特殊出生率は1.43と2年連続で低下した。出生数は2年連続の100万人割れ。3万人超も減るのは12年ぶりで、今年に入っても減少が続いている。これまでで最も出生数が多かった1949年は269万人が生まれたが、2017年はこの3割強にとどまった。出生率は前年に比べて0.01ポイント下がった。2005年に最低の1.26を記録してから緩やかに回復してきたが、ここ数年は1.4台前半で頭打ちの状態が続く。

出生率がほぼ横ばい圏だったのに出生数が大きく減ったのは、女性の人口そのものが減っているためだ。出産適齢期とされる15~49歳の女性は約2498万人となり、前年に比べ1.3%減った。 このうち子供の8割を生んでいる25~39歳は2.5%減った。第2次ベビーブームの1971年~74年に生まれた「団塊ジュニア」と呼ばれる人口が多い世代が40歳代半ばとなり、出産がピークアウトしてきたことも響いている。晩婚・晩産化の影響も大きい。第1子の出産年齢が上がると、第2子以降の出産は減る傾向にある。

日本以外の先進国においても少子化は深刻な影を落としている。2017年に主要7カ国(G7)で生まれた新生児はカナダを除く6カ国で減少し、米国は30年ぶりの低水準。G7全体の出生数は第2次世界大戦後で初めて800万人を割り込んだとみられる。米リーマン危機後の景気後退やその後の賃金低迷で出産に慎重になる人が増えた。フランスは数少ない少子化対策に成功した先進国とみられていた。合計特殊出生率が1993年に1.66まで下がり、保育所を原則無料にするなど育児給付を手厚くする政策をとった。GDPの3%にあたる手厚い育児支援予算で、2006年には出生率が2まで回復していた。潮目が変わったのは2010年の欧州債務危機だ。緊縮財政を迫られ、給付を削減せざるを得なくなった。2014年に30代の女性の出生率が20代を上回り、20代の人口1000人あたりの出生率は5年間で1割減った。緊縮財政はイタリアや英国の出生率低下にも影響したとみられる。公的支援が縮小されると、貯蓄など一定の備えをしてから出産しようと考える人が増えるからだ。対照的に育児支援策の拡充によって出生数を増やしてきたのがドイツだ。2016年には約20年ぶりの高水準となる79万2千人まで増加。30~37歳の女性の出産が増えている。出生率も1.59と1970年代前半の水準に上昇。1990年代半ばの1.2台前半からV字回復した。積極的な移民受け入れも後押しした。母親が外国人の子供が前年比25%も増え、出生数の4分の1近い18万5千人を占めた。

アメリカ国旗

2018年4月4日「世田谷区、がん粒子線治療患者に利子補給制度を始める!」

東京都世田谷区は、区民在住者のがん患者が重粒子線や陽子線などの高額な先進医療を受けた場合に指定金融機関から受けた融資の利子を補助し、実質無金利で高額な治療費が借りられる制度を始めた。

昭和信用金庫と世田谷信用金庫が指定金融機関で、融資の上限は350万円。世田谷区が年1.25%の金利分を全額補助する。融資期間は3箇月以上10年以内で、所得制限は設けない。治療を受ける医療機関は国内であれば場所を問わない。初年度は5件の利用を見込む。

粒子線治療に対する補助制度を設けている自治体は増加の傾向にある。同じ都内では豊島区、他には大和市、大阪府、群馬県、静岡県、鹿児島県、神奈川県などで何らかの補助制度を設けている。いずれもその自治体の住民であることは必須要件となっているが、その自治体の施設が指定されていたり、豊島区、世田谷区のように日本国内どこでも良いなど条件は異なる。助成内容も利子補給であったり、治療費の一部を支給するなど、各自治体によって違いがある。

アメリカ国旗

2018年3月29日「東芝、重粒子線治療装置を韓国で受注!」

東芝は3月29日、「重粒子線治療装置」を韓国に輸出すると発表した。東芝にとって初の海外受注となる。受注額は装置だけで約150億円。東芝は医療機器会社をキャノンに売却したが、加速器を用いる同装置事業は自社に残した。海外でがん治療装置の市場を開拓し、成長を目指す。

重粒子線がん治療は光速の70%まで加速させた炭素イオン線を幹部に照射する。日本では約300万円前後かかる高額な治療法だが、肺がんや肝臓がん、膵臓がん、骨肉腫といった従来の放射線治療では難しかったがんへの効果が期待できる。陽子線に比べ大きなパワーを持ち、これまで開発は日本がリードしてきた。加速器の小型化が進み、普及に弾みがついている。

東芝は韓国DKメディカルソリューションと組み、韓国有力私大の延世大学に2022年に納入する計画。東芝は装置の保守事業も別途受注したい考え。

アメリカ国旗

2018年3月14日「がん光免疫療法の臨床試験開始!」

近赤外線という光を使ってがんを治療する「がん光免疫療法」の国内初の臨床試験が、国立がん研究センター東病院で14日までに始まった。米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員らが開発した手法で、米バイオベンチャーが実施。頭や首のがん患者数人を対象に安全性と効果を確認し、数年以内の承認を目指す。

治療は、がん細胞の表面に多いたんぱく質に結合する抗体と、近赤外線に反応する物質をつなげ、薬剤として利用。この薬剤を患者に注射し、翌日にがんの部分に光を当てると、がん細胞にくっついた薬剤に化学反応が起きて、がん細胞が破裂するという。さらに、破裂したがん細胞の成分に体の免疫機能が反応するため、光を当てた部位から離れた場所に転移したがんにも効果が期待できる。近赤外線は無害で安全性が高い。体の表面から離れた深い場所にあるがんにも、注射針に直径1~2ミリの光ファイバーを通して光を当てられる。

治験の対象者は、頭や首のがんが再発し、標準的な治療に効果がない患者。米国の治験では、治療を受けた15人中14人はがんが小さくなり、うち1人ではがんが消滅したと報告されている。 中には長期間、治療効果が続いている人もいるという。

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2018年3月13日「18歳成人、閣議決定へ!」

3月13日の閣議で、政府は成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案を決めた。主要国では18歳成人が多く、若者の自立を促す狙いもある。一方で女性が結婚できる年齢は16歳から18歳へ引き上げ、男女ともに18歳に揃える。政府は今国会で成立させ、2022年4月1日の施行を目指す。

成人年齢の引き下げにあわせ、年齢要件を「未成年者」や「20歳」と定めている他の法律も見直すことになる。飲酒や喫煙、公営ギャンブルも現在の20歳以上を維持するため、法律上の「未成年者」を「20歳未満の者」に変更する。こうした法改正を民法改正案の付則に盛り込み、民法を含め計23本の法律を定める。

一方で、成人年齢を引き下げると18歳でも親の同意なくクレジットカードを作ったり、ローンを組んで高額商品を購入できるようになり、悪徳商法に狙い撃ちされて消費者被害が拡大するのではないかという懸念がある。早いうちからの金融等の消費者教育の整備がより重要となる。

伝統的に続く成人式については、実施時期が難しい。1月開催だと入試シーズンが佳境を迎えたところで、出席者が激減することが考えられる。呉服店や貸衣装業、美容関連は稼ぎ時でもあり、実施時期によっては、業績に多大な影響を及ぼす可能性がある。

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2018年3月11日「中国、国家主席の任期を撤廃!」

3月11日に開催された全国人民代表会議で、国家主席の任期をこれまでの「2期10年」から事実上の無制限とする憲法改正案を採択した。憲法改正は約3000人いる全人代の代表が無記名で投票し、賛成2958票、反対2票、棄権3票と圧倒的な賛成多数で可決された。

これまで国の元首である国家主席の1期の任期は5年で、憲法には「2期を超えて連続して就くことができない」との規定があったが、今回の改正でこれを撤廃した。習近平国家主席が兼任する共産党トップの総書記と軍トップの中央軍事委員会主席には任期に明文化された上限がない。 今回の法改正により、終身で権力の座に座り続けることが可能となった。

憲法で大統領の任期を連続2期までと定められているロシアにおいても、2008年当時、2期を終えることになったプーチン大統領は、自身に忠実なドミトリー・メドベージェフに大統領を務めさせ、自らは一度首相に就任しておいてから2012年に再び大統領に就任するという奇策を用いて権力を維持し続けた。しかしながら一度首相になって連続を途切れさせる手法は、当時野党からも反発され非難を浴びた。その後、大統領の終身制を目論むのではないかと警戒されていたが、プーチン大統領はそうした声に対して「私は憲法を変えたことは一度もない。自分の都合の良いように憲法を変えたこともないし、今もそんな計画はない」と述べて火消しに努めている。

今回の中国における権力の終身制は圧倒的多数が賛成し、国内において批判の声は上がってこない。ロシアと比べても不気味なまでの独裁体制を習首席は固めていることになる。覇権主義を掲げる習首席の独裁が終身続く国家が世界第2位の大国であることの意味を、米国を始めとした先進各国は噛みしめる必要がある。

アメリカ国旗

2018年2月23日「米大使館エルサレムへ移転、1年以上前倒しを発表!」

2018年1月22日の本コラムで、米大使館を現在のテルアビブからイスラエルへ2019年末までに移転させることを書いたが、米国務省は2月23日、イスラエル建国70周年にあたる本年5月14日に前倒しで移転させると発表した。

1年以上の大幅な前倒しだが、トランプ米大統領の支持基盤であるキリスト教保守派が移転を強く求めており、選挙公約を早期に実現する形になる。

この発表を受けて早速同日に、パレスチナ自治政府の報道官は「移転は受け入れられない」と猛反発した。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「建国70周年はさらに素晴らしい国家的な祝賀になる」と歓迎の意を示している。

パレスチナやイスラム圏諸国などはこれに強く反発しており、米が仲介する中東和平交渉の再開は見通せないこととなった。

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2018年2月15日「2030年EV化、インド撤回!」

2017年12月26日の本コラムで、インド政府が2030年にすべて電気自動車(EV)化を図り、ガソリン車やディーゼル車を禁止することを表明したことに触れたが、15日にニューデリー市内で行われた充電スタンド開所式に出席したガドカリ道路交通相が全量EV化の撤回を語った。

そもそもEV化の推進は排ガス規制目的だけではなく、インド国内にてシェアを握るマルチ・スズキやトヨタ自動車から、国内の印マヒンドラ・アンド・マヒンドラなど地場勢を後押しする目的があったと考えられる。従来のガソリン車やハイブリット車においては、日本車などとの技術格差が大きかったが、電気自動車の場合は技術的には容易で、国内メーカーがシェアを伸ばす好機と捉えたものと考えられる。

しかしながら、インドは経済の発展に伴い、電力需要がさらに拡大しているが供給量が追いつかず、慢性的な電力不足が続いている現状では、全量を電気自動車に置き換えることはそもそも無理がある。

ハイブリット車や水素を燃料とする燃料電池車(FCV)など、自力で電気を作り出すことのできる車が適しているといえるが、技術的には複雑で、今回の撤回を受けトヨタ現地法人のシェカー副会長は「環境保全に貢献するため、HVや燃料電池など(ガソリン車の)代替車の開発に取り組む」と述べた。

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2018年2月15日「がん遺伝子検査、4月に先進医療として臨床開始!」

がんに関連した114種類の遺伝子を一度に調べることのできる検査法が、15日の厚生労働省の審査部会において条件付で先進医療に指定することを了承された。

国立がん研究センター中央病院は早ければ4月にも、先進医療として臨床開始する。

114種類の遺伝子を一度に検査できるため、患者ごとに最適な治療法を探す「がんゲノム医療」の推進につながると期待されている。

先進医療の技術料は全額患者負担となり、高額療養費も適用されないことから高額な検査法となるが、先進医療以外の健康保険適用部分については3割負担や高額療養費が適用される健康保険との混合診療が認められることになり、すべてが自己負担となってしまう自由診療に比べると患者の負担は下がり、利用しやすくなる。

2016年05月31日 「医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画を閣議決定!」

2018年2月9日「減らした残業代で先進医療費用を支援!」

サントリーホールディングスは4月から、がんにかかったグループ社員に全額自己負担となる先進医療にかかる費用を支援する制度を導入すると発表した。

先進医療の対象となる重粒子線や陽子線治療では、約300万円前後の治療費が全額自己負担となることから、1人あたり500万円を上限に先進医療の技術料を支援する。同ホールディングスの共済会に加盟する約1万人が対象となる。

働き方改革により浮いた残業代の一部を原資とし、社員の士気向上や人材の確保につなげる狙いがある。

地方自治体などでは、これまでも住民に対する粒子線治療での融資制度を設けているところがあったが、一企業が無償で支援する取り組みも大企業を中心にこれから増えていくものと考えられる。背景には粒子線治療は集中的に治療が行え、従前の放射線治療に比べて治療期間が格段に短く、副作用や後遺障害が少ないことから、治療を続けながらの勤務が可能な点が挙げられる。

2018年1月22日「エルサレムに米大使館移転を表明!」

1月22日、ペンス米副大統領はイスラエル国会で演説し、2019年末までに米大使館をテルアビブからエルサレムに移転させると表明した。

トランプ米大統領は昨年12月に、エルサレムをイスラエルの首都と認定し、大使館移転を指示していたが、時期については明言していなかった。

東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置づけるパレスチナはこれに猛反発。ペンス副大統領が21日にヨルダンのアブドラ国王と会談した際も、「将来のパレスチナ国家の首都でなければならない」と、同国王から釘を刺されていた。また、「米国の動きは過激主義を勢いづかせている」とも述べ、アラブ諸国の反発は必死で、テロが懸念される事態となった。

パレスチナ自治政府高官は、ツイッターで「過激派への贈り物だ。米国こそが問題の一部だと証明した」と強く米国を非難している。

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2018年1月10日「成年後見人の監督責任、国に賠償命令!」

1月10日、被後見人の兄が国に対して4200万円の損害賠償を求めていた訴訟で、京都地裁は約1300万円を支払うよう命じた。。

被後見人の継母が1989年から被後見人が亡くなる約20年間、財産管理などを行う後見人を務めており、2007年3月以降で1900万円余りの使途不明金があったが、家事審判官(裁判官)は「後見事務の遂行状況は良好」として確認を怠っていた。後見人である継母は2012年に亡くなっており、被後見人の遺産相続人となる兄が国に対して賠償を求めていたものである。

久保田裁判長は「成年後見人の監督の目的、範囲を著しく逸脱した」と指摘し、「確認の手続きを取っていれば、不適切な支出を防止できた」として、国の責任を認め賠償を命じた。

家事審判官は成年後見人の事務が適正かを監督する立場にある。後見人に対して事務の報告を定期的に求め、不正行為があった場合は解任することもできる。

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2017年12月26日「FCV促進のため水素基本戦略を決定!」

12月26日、政府は首相官邸で関係閣僚会議を開き、エネルギー源としての水素の普及に向けた水素基本戦略を決定した。官民一体で燃料電池車(FCV)や水素発電の普及を促進。温暖化ガス削減につなげるほか、2050年を目標に水素の価格を5分の1に下げ、ガソリンや液化天然ガス(LNG)などと同程度のコストにすることを目指す。安倍晋三首相は会議で「水素はイノベーションによってエネルギー安全保障と温暖化問題を解決する切り札となる。基本戦略に掲げた施策を速やかに実行に移す」と述べた。FCVは2020年までに4万台、30年までに80万台の普及を目標にする。規制改革などで水素を供給する水素ステーションの整備を加速。25年までに全国320カ所に設置する計画だ。燃料電池を使ったバスやフォークリフトの普及も後押しする。次世代自動車では欧州などで普及する電気自動車(EV)への支援を急いでおり、日本は対抗手段としてFCV普及の環境整備を進める。

世界的にはEV化が加速している。ノルウェーでは2030年から、オランダは2025年から、インドは2030年から、イギリスとフランスはそれぞれ2020年と2030から段階的に、EV、もしくはEVとHVのみで、ガソリン車とディーゼル車を禁止すると発表した。中国は世界で最も多くEVを生産している。2016年に世界で販売されたEVの40%が中国製だ。その中国も2019年から規制を開始し、将来的にはEVとHVのみを販売する予定。欧州を中心にEV化が急速に進み、ガソリン・ディーゼル車が排除されるのは地球環境対策だけが理由ではない。ルノーを始め欧州のメーカーはディーゼル車に強い。しかし、各社は高まる環境規制に対応しきれていないのが実状だ。ドイツのフォルクスワーゲンによる米国燃料規制違反が耳目を集めたが、ディーゼル乗用車の技術的限界を露呈しているのかもしれない。7月18日にはドイツのダイムラーが、メルセデス・ベンツのディーゼル車の大規模リコールを発表している。排ガス規制に関しては、日本車の技術が世界をリードしており、EV化は日本車潰しの要素も絡んでいる。EVは走行距離や充電などの技術的課題だけではなく、そもそも本当にエコなのかという問題もある。電気を作るのに化石燃料を用いれば、必ずしも環境に優しいとは限らない。経済産業省が燃料製造から自動車走行までの二酸化炭素排出量を試算したところ、中国で今EVを1キロ走らせると82グラムの二酸化炭素を排出する。電力の70%を排出量の多い石炭による火力発電に頼っているためだ。ガソリンと電気で走るハイブリッド車(同69グラム)よりも負荷は大きい。フランスは7月6日に、ユロ・エコロジー大臣が2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を全面禁止すると発表した。原子力発電が75%を占めるフランスではその効果は大きい。EV化を進める上では原子力発電が現状ではセットにならざるを得ない。欧州環境省EEAの報告では、欧州の自動車の80%がEVになると150ギガワットの発電能力が必要になる。これは原発150基分の発電量に相当する。日本に置き換えると50基の原発が必要となる。その意味では国内の原発を縮小し、輸出を強化しようとするフランスにとって、世界のEVシフトはメリットが大きいといえる。ただ何故、国内で衰退傾向にあるのかといえば、コストと安全面に問題があるためだ。EV化と引き換えに原発が増加することが、果たして地球環境に優しいといえるのだろうか?

水素を燃料とするFCVは究極のエコカーといえる。航続距離も長いなどメリットも大きい。課題はインフラ整備だろう。FCVの普及には燃料を入れる水素ステーションが網羅されている環境が欠かせない。8月末時点で91カ所開業しており、政府は東京五輪・パラリンピックを開催する20年度に160カ所、25年度には320カ所まで増やす目標だ。水素ステーションはガソリンスタンドに比べて費用がかさむため、業界団体が規制緩和を要望してきた。経済産業省は関係する法令を改正する。運営費の低減では安全性の監督者に必要な要件を見直す。今は水素を扱う施設での経験が必要とされているが、天然ガスなど高圧ガス施設でも要件を満たせるようにする方針。ナンバープレートを控えて水素の売り先を管理する人は配置しなくてもいいように改め、人件費負担を和らげる。経済産業省によると水素ステーションの設備費は4~5億円、運営費は年4千万~5千万円かかる。安価な設備の開発や規制緩和などで20年に整備費と運営費をそれぞれ半減させる方針だ。

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2017年12月22日「新生児過去最少の94万人!」

12月22日、厚生労働省は2017年の人口動態統計の年間推移を発表した。国内で生まれた日本人の新生児は94万1千人で、100万人を2年連続で下回った。統計の残る1899年以降、最小を更新する見通し。一方で死亡数は戦後最多の134万4千人で、出生数が死亡数を下回る自然減は初めて40万人を超えそうだ。

出生数は2016年に97万6978人と100万人下回り、17年はさらに3万6千人減る見込み。出生数の減少について厚生労働省は「25~39歳の出産適齢期の女性の減少が大きな要因」と分析。「子供を産みやすい環境整備を進めていく必要がある」と、保育の受け皿拡大などを一層進めていく考えを示した。

厚生労働省は日本を含む9カ国で人口1千人当たりの出生率を比較。米国12.4(15年)、英国12.0(15年)、フランスとスウェーデンがともに11.8(15年)の順で、日本の7.5(17年)は最下位だった。一方、死亡数は増え続け、17年は134万4千人と前年比で3万6千人増を見込む。

フランスやスウェーデンのように少子化対策に成功した国もある。一言でいえば「産めば産むほどインセンティブが効くシステム」。フランスでは所得制限なしで2子以上を養育する家庭に20歳になるまで子供の数によって手当てが支給される。さらに第3子から支給される家族補足手当もある。子育て世代、特に3人以上の子供を育てている世帯に対して大幅な所得税減税が適用される。子供を3人養育すると年金が10%加算される年金加算がある。妊娠出産から産後のリハビリまで全て無料。43歳までと年齢制限はあるが不妊治療と人口中絶は全て公費で賄われる。高校までの学費は原則無料で、公立大学も授業料は一切かからない。公立保育所の充足率は低いが、認定保育ママ制度があり、認定保育ママに子供を預けた場合、手当てが支給される仕組みがある。日本において少子化対策は喫緊の課題である。少子化対策と割り切るならば、現在の児童手当の第1子分を第2子以降に振替えるべきだし、第3子以上として大幅なインセンティブを付与しても効果的だろう。妊娠・出産、保育や教育、共働きなどでの子育て環境の充実も必要だ。第3子以上を育てた場合の年金加算も今すぐにでも実行できる。国の将来を考えるのであれば高齢者よりも子供の予算を充実させるべきである。

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2017年12月21日「米のエルサレム首都認定、国連総会で撤回採決!」

12月21日、国連総会は緊急特別会合を開き、エルサレムをイスラエルの首都に認定した米国の決定撤回を求める決議を賛成多数で採択した。賛成は日本を含む128カ国。総会決議は安全保障理事会のような法的拘束力を持たないが、国際社会の総意を示す。決議では米国の名指しを避けたが「エルサレムの地位を巡る最近の決定に深い懸念」を表明。「聖徒エルサレムの特性や地位、人口構成を変えるいかなる決定や行動も法的に無効であり、安保理の関連決議に従い取り消されなければならない」とした。テルアビブからエルサレムへの大使館移転を決めた米国を念頭に「全ての国連加盟国はエルサレムに外交機関を置かないよう求める」とも記した。

トランプ政権下でのイスラエルへの一方的な肩入れは、世界の安全保障にとって大きなリスク要因となり得る。敬虔なユダヤ教徒で娘婿のクシュナー上級顧問の影響が大きいのかもしれないが、トランプ大統領はこれまでもパレスチナとイスラエルの2国家共存にこだわらない考えを示している。2国家共存は、パレスチナ人が自分たちの国を持ち、隣り合うイスラエルと共存する。長い対立と流血の末にたどり着いたパレスチナ問題を解決に導く和平の道である。歴代の米政権は「2国家共存」を支持し、仲介役を果たしてきた。イスラエルに影響力を持つ米国が2国家共存の旗を降ろせば、イスラエルによる占領地の固定化を許すことになりかねない。ネタニヤフ政権はヨルダン川西岸などへの入植地拡大を続けている。パレスチナ人をイスラエルに受け入れる「1国家」案は、パレスチナ人に投票などの権利が与えられない可能性があり「アパルトヘイト(人種隔離)だ」との反発が根強い。パレスチナ自治政府の高官は、米国の政策転換の可能性について「パレスチナ国家を除去」する試みだとして非難した。一方、イスラエルのネタニヤフ首相は「トランプ氏ほどのユダヤ人とユダヤ国家の支持者はいない」と絶賛している。米政権内にトランプ大統領の暴走を止める手立てはないのか?トランプ大統領の政策転換に一番驚いたのは、他ならぬ米国務省の担当者だ。国務省は事前に聞かされていなかった。政府内で調整せず側近が政策を動かすのは、移民入国禁止の大統領令と同じ手法だ。

国連採決の前日、トランプ大統領は米国に逆らって決議案に賛成した国には援助を打ち切ると表明しており、一部の国は棄権した。賛成128カ国に対して反対は米国やイスラエル、パラオなど9カ国。棄権はカナダ、オーストラリアのほか、ハンガリーなどの東欧諸国、ジャマイカなどカリブ海諸国を中心に35カ国に上った。採決に先立ち、緊急会合の開催を求めたトルコのチャブシオール外相は「ある加盟国が反対票を投じるよう全ての加盟国を脅した。ある国々は経済援助を打ち切ると脅された」と述べ、米国を非難した。その後演説した米国のヘイリー大使は「国連で我々に敬意を払わない国々を見ている。この投票は記憶される」と返しているが、国連を舞台に恥知らずの言動を繰り広げた大国の言動こそ未来にわたって記憶されるべきである。未来があるのであれば・・・。

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれの聖地であり、大変センシティブな問題だ。イスラエルは1967年に東エルサレムを力ずくで占領した。エルサレムを「永遠の首都」と主張するが、国際社会は認めていない。米国のイスラエルへの過度な肩入れは、イスラム世界全体の怒りを招き、中東の緊張を高める結果となりかねない。パレスチナの穏健派の立場を弱め、過激派をかえって勢いづける恐れがある。トランプ政権が世界の安定と秩序を守る上でのリスク要因であることはこれまでの言動で明らかだが、一方で他の国々がこの重大な危機に迅速に対応できたことはポジティブな要素だ。ともすれば米国追従とみられている日本も賛成票を投じ、決議後の25日には河野外相がパレスチナ自治政府のアッバス議長と会談している。そこで、アッバス議長は「パレスチナ側として暴力に訴えることは考えていない」と明言した。国連決議が功を奏した結果である。

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2017年10月19日「病気腎移植、条件付きで先進医療に指定!」

10月19日、厚生労働省の審査部会は、腎臓がんなどの患者から摘出した腎臓の病巣を取り除いて別の患者に移植する「病気腎移植(修復腎移植)」を先進医療として認めることを決定した。治療がうまくいかなかった患者が4人出たときは中止するとの条件を付け、臓器提供者が定めれれた条件を満たしているかなどをチェックする委員会に、日本移植学会など第三者的な立場の医師を加えることも求めた。病気腎移植は東京西徳洲会病院が申請していた。先進医療は、同病院と臨床研究として病気腎移植を実施してきた宇和島徳洲会病院が担当する。試験として9年間(うち5年間は観察期間)で42人に実施する計画だ。

病気腎移植は約25年前から宇和島徳洲会病院の万波誠医師らが独自の判断で実施してきた。日本移植学会は2007年「医学的な妥当性はない」との見解を発表。部分切除ですむ患者からの腎臓摘出を促しかねないなどの指摘もあり、厚生労働省は同年、原則禁止とした。これを受け、宇和島徳洲会病院は2009年から臨床研究として病気腎移植を実施。これまで他人からの腎移植を13人に実施し、うち7人が手術後5年時点で腎臓の定着が確認できているという。2011年に同病院が先進医療の申請をしたが、厚生労働省の審査部会は3度にわたり継続審議としていた。現在、小さな腎臓がんの外科治療は全摘出ではなく部分切除が基本で、申請内容は全摘出する患者の条件が不明瞭だった。医療機関の実施体制や有効性・安全性の評価方法、患者への説明同意文書の内容なども不十分とされた。今回は申請内容が修正され、厳しい条件を付けることで先進医療として認めた。結果が良好だった場合は他の病院でも実施される可能性がある。国内では腎臓透析患者が30万人以上おり、移植を希望する患者も1万人を超える。ただ提供数は不足しており、臓器提供者が現れるまで10年以上待つケースも多い。

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2017年9月21日「S&P、中国の格付けを1ノッチ引き下げ!」

9月21日、米格付け大手のS&Pグローバル・レーティングは、中国の長期債務格付けを従来の「AA-」から「A+」へと1ノッチ引き下げたと発表した。長引く債務の増加が経済と金融のリスクを高めると判断した。一方、今後3~4年は堅調な経済が見込めるとして、格付け見通しは「安定的」とした。同じく米大手格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスからも5月24日に「Aa3」から「A1」に1ノッチ引き下げられている。格付けの見通しは「安定的」。潜在的な成長率の低下につれ、政府の債務負担が重くなると判断した。

翌22日、中国財政省はS&Pが格付けを引き下げたことについて「間違った決定だ」と厳しく批判する談話を発表している。国の格付けが引き下げられることについては、これまでも多くの政府が反発してきた。日本では2002年5月にムーディーズが2ノッチ引き下げた際、担当者を参考人招致したり、公開質問状を何度も送付して疑義を呈している。米国でも2011年8月にS&Pが「AAA」から1ノッチ引き下げたことに対して、当時のオバマ大統領が「格付け会社がなんと言おうとも我々はトリプルAの国だ」との声明を発表し、2013年2月には米連邦政府の司法省が数ある格付け会社の中でS&Pだけを相手に、サブプライムローン関連の金融商品を不当に高く格付けし金融機関が損失を被ったとして、意趣返しのような民事制裁金の支払いを求める訴訟を起こしている。イタリアでは2011年と12年のS&Pおよびフィッチによる国債格下げに関連して、格付け会社が誤った情報を流布し市場を操縦した疑いがあるとして、検察当局が担当アナリストや元経営者を起訴しているなど、批判や妨害行為も多く見受けられる。1995年にムーディーズが日債銀、拓銀の引き下げ見通しを発表した際、当時の大蔵省が「指定格付け会社から外すぞ」と恫喝して撤回を迫ったことがあったが、モルガンスタンレーに「当局が会社に脅迫的な言辞を取るのは発展途上国でも珍しい、前代未聞のエピソード」と批判を受けている。

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2017年9月20日「日銀の国債保有額、民間金融機関を上回る!」

日銀が9月20日に発表した資金循環統計によると、6月末の保有残高は前年比9.9%増の437兆円となり、銀行や保険会社など民間の主要金融機関の合計を初めて上回った。発行済みの国債全体に占める割合も初めて4割を突破した。大規模な金融緩和は今後も続く見通しで、日銀のシェアはさらに拡大し続ける模様。

銀行を中心とした預金取扱機関の保有残高は15.6%減の197兆円。統計で比較可能な2005年以降では初めて200兆円を割り込んだ。メガバンクだけでなく、地方銀行も当面の利益を確保するために保有国債の売却を進めた。保険・年金基金は6.7%減の235兆円で、2四半期連続でマイナスになった。海外投資家の保有残高は117兆円と4.9%増えて過去最高になったが、伸び率は4四半期続けて鈍っている。日銀は2016年9月に長短金利操作と呼ぶ新たな政策を導入し、保有国債の増加額はやや鈍っている。保有残高の伸び率は2016年9月末の31.3%と比べると大幅に小さくなっている。メガバンクを中心に民間の銀行は金利上昇時の国債下落リスクに備え、長期国債の保有残高を徐々に減らしてきた。代わって異次元の金融緩和を進める日銀が保有残高を増やし続けてきたのだが、借金の貸し手と借り手が一緒というのはやはり異常な事態だ。

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2017年9月13日「国民医療費42.3兆円で過去最高を更新!」

9月13日、厚生労働省は2015年度の国民医療費が、前年比3.8%増の42兆3644億円だったと発表した。9年連続の増加で、金額は過去最高を更新し続けている。高額なC型肝炎治療薬の登場など高額な薬剤や医療の高度化、患者の高齢化などの影響で、増加額はこの5年で最大となった。年齢構成別に医療費を使う割合を見ると65歳以上が59.3%を占め、75歳以上は35.8%だった。

医療機関での高額な治療が増え続けている。健康保険連合会の集計によると、患者1人あたりの医療費が1カ月で1千万円以上だったケースが、2016年度は484件と昨年度と比べ件数は3割以上増え、過去最多になった。1カ月で1億円を超えた治療も2件あった。医療の技術が高度になっていることが背景にあり、財政負担と両立できるかが課題だ。高齢者の自己負担増や、高度で高額な医療費は先進医療制度の枠組みの中で混合診療として利用者負担を求めていくことが、高齢社会の中で、制度を維持していくうえで重要となる。

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2017年8月18日「トランプ大統領、バノン首席戦略官を解任!」

8月18日、米政権はトランプ大統領の最側近だったバノン首席戦略官・上級顧問が同日付で退任すると発表した。トランプ大統領による事実上の解任だ。バノン氏は移民排斥や保護貿易など、トランプ大統領誕生の原動力となった「米国第一主義」を推進した。政権発足後はプリーバス氏と並んでホワイトハウスの筆頭幹部に就き、政権の黒幕とも呼ばれた。しかしバノン氏の排外的な主張は政権内の穏健派と相容れず、トランプ氏の娘婿、クシュナー上級顧問はバノン氏解任を進言していた。

トランプ政権ではこれまでも解任や辞任が相次いでいる。2月にフリン大統領補佐官、5月にコミーFBI長官、7月にスパイサー大統領報道官、プリーバス首席補佐官、スカラムチ広報部長、そしてこの度のバノン首席戦略官・上級顧問と、次々にホワイトハウスを去っていった。

18日午前11時過ぎ、米ニュースサイトが「首席戦略官のスティーブ・バノン氏を解任へ」と伝えると、100ドル強下げていたダウ工業株30種平均は急速に下げ幅を縮め、午後1時前には42ドル高に転じる場面もあった。退任で「米政権が軌道修正される」のではとの期待が広がった。

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2017年8月15日「中国、米国債保有額再び首位!」

米財務省が8月15日に発表した6月末の国別の米国債保有額によると、中国は前月末より443億ドル多い1兆1465億ドルで、これに対し日本は205億ドル少ない1兆908億ドルにとどまって9カ月ぶりに首位に立った。下落していた人民元相場が落ち着き、外貨準備を取り崩してドル売り・元買いの市場介入しなくてもよくなったためと見られる。

中国は2000年代に入ってから輸出で稼いだ巨額のドルを外貨準備として溜め込み、その大部分を米国債で運用してきた。米国債の保有額は2008年9月に初めて日本を抜いて世界一となった。「中国と米国の利益が互いに溶け合っている表れだ。双方が共に努力し、良好な経済貿易関係を維持するよう希望する」。中国外務省の華春瑩副報道局長は16日の記者会見で、中国が再び最大の米国債保有国になったのを受けてこう述べた。

中国は米側に北朝鮮問題と経済を切り離すよう繰り返し求めてきた。にもかかわらず米側が通商問題を絡ませてきたタイミングで再び最大の米国債保有国に浮上したことは、いざというときに米国を牽制する材料になり得るとみている。中国は過去にも、米国との駆け引きで最大の債権者としての立場を利用したことがある。米国が2008年秋にリーマン危機への対応で大量の国債を増発した際、中国はその多くを引き受けている。2009年に当時のクリントン国務長官は、対中外交において「銀行を相手に強く出られるか?」と嘆いた。2011年8月に米格付け会社が米国債を格下げすると、中国国営の新華社は「米国の最大の債権者である中国は、ドル資産の安全を保証するよう米国に要求するあらゆる権利を持つ」として軍事予算の削減を迫る論評記事を配信した。

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2017年6月29日「アジアインフラ投資銀行に最高格付け!」

6月29日、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスから最上位となる「Aaa」の格付けを付与された。格付けの見通しは「安定的」。ムーディーズは「ガバナンスの強固な枠組み、妥当な自己資本、流動性の高さを考慮した」としている。

格付け大手のムーディーズから最上位の格付けを付与されたことにより、海外での債券発行による低金利での資金調達に道筋がたった。現在の加盟承認国は80カ国・地域まで増加、主要7カ国では米国と日本だけが参加していない。国際的なお墨付きを得たことで米国が参加に転じる事態も想定され、日本だけが梯子を外されることがないよう十分にウォッチし続けることが必要だ。

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2017年6月1日「米国、パリ協定からの離脱を表明!」

6月1日、トランプ大統領は地球温暖化対策の国際的脇組み「パリ協定」からの離脱を表明した。「パリ協定は不公平。他国が米国を経済的に利用する仕組みだ」と、ホワイトハウスで声明を読み上げた。パリ協定では世界の200近い国と地域が、温暖化ガスの排出削減という共通の目標に取り組んでいる。非参加国はシリアとニカラグアだけだったが、これに米国が加わることになった。オバマ前大統領は「現政権は未来を拒絶する少数の国に加わった」と非難している。途上国の対策を援助する100億ドルの「緑の気候基金」に30億ドルを拠出するというオバマ前政権での約束も、トランプ大統領は「払わない」と反故にした。

トランプ大統領は離脱を表明する一方で「離脱はするが、再交渉を始めて公正な協定を結びたい」とも表明しているが、これに対し、ドイツのメルケル首相や独仏伊の3首脳は即座に共同声明で「再交渉できない」と拒んでいる。国連気候変動枠組み条約事務局も「単一の国の要請による再交渉はできない」としている。トランプ大統領は「パリ協定に残れば大きな法的責任を負う」というが、そもそも協定参加国は温暖化ガス排出削減目標を自主的に決めることができ、法的拘束力や罰則はない。トランプ大統領の離脱声明は無知と誤解に基づく。トランプ大統領は他国と何を再交渉したいのか不明だ。TPPと混同しているかのようだ。マサチューセッツ工科大の試算をもとに「パリ協定が全面履行されても2100年までにセ氏0.2度程度しか気温は下がらない」とも指摘しているが、引用された研究者はロイター通信に「何もしなければ気温は5度以上上昇する可能性がある」と反論した。引用にあたって政権側から問い合わせはなかったという。「40年までにGDP3兆円分が失われ、製造業から650万の雇用が消える」。この数字は再生可能エネルギー業界などの成長や雇用を無視している。「パリ協定で中国は数百基の石炭発電所の新設を許されているが、我々はできない」。パリ協定には中国に新設を許可したり、米国に制限したりする規定はない。「私は(炭鉱業で栄えた)ピッツバーグの市民を代表して当選した。パリではない」。このトランプ大統領の発言直後、ピッツバーグ市のペドュート市長は「パリ協定に従う」とツイッターに投稿した。

トランプ大統領のパリ協定離脱宣言は、各国の米離れを加速させた。ドイツのメルケル首相は「ほかの国を頼れる時代は終わった。欧州は自らの手で運命を切り開くべきだ」とミュンヘンでの演説で「脱米国宣言」をしている。米国内でもニューヨーク、カリフォルニア、ワシントン州の3知事は協定の内容を遵守する同盟を結成。全米85都市の市長も同様の措置を取ると発表した。米ウォルマート・ストアーズのダグ・マクミロンCEOは離脱宣言の翌日、株主総会後の記者会見で「米国のパリ協定離脱に大変失望している」として独自の温暖化ガス削減目標を打ち出し、大手企業として環境破壊につながる活動を抑制する姿勢を表明している。

案外、無知や誤解ではなく確信犯なのかもしれない。トランプ大統領の信じる科学には一貫性が見られる。ES細胞研究に反対し、ワクチン接種が自閉症のリスクを高めると効用に懐疑的な姿勢を隠さない。トランプ大統領の科学は人類の未来にとって、大きなリスク要因となる。

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2017年5月22日「日本初のペイオフ終結!」

日本発のペイオフが6年8箇月で終結。2010年9月に経営破綻した日本振興銀行を受け継いだ法人が預金者への弁済を終了し、清算した。約6千億円の預金のうち保護対象外となる1千万円を超える預金の39%、41億円がカットされた。1千万円超の預金者は破綻当時3423人で、弁済手続き中に申請しなかった預金を除き、預金総額は105億円に上る。債権回収などで弁済原資を確保し、最終的に61%を弁済した。

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2017年5月10日「米警察、トランプ政権閣僚に質問した記者を拘束!」

5月10日、米南部ウェストバージニア州で、トランプ政権閣僚に大声で質問した記者が一時逮捕されたことをニューヨーク・タイムズ紙が報じた。「騒動を起こした」と手錠をかけられ、留置施設で約8時間を過ごす羽目に。メディアを「人民の敵」と呼ぶトランプ大統領の意向を汲んだような警察の対応に、人権団体は危機感を強めている。

言論の自由は民主主義の根幹である。仮にメディア側の言動に問題があったとしても、強権力の発動に慎重であるべきは、たやすく人権が侵害されてしまうからだ。米国では1950年代のマッカーシズムという負の歴史がある。赤狩りはマスコミやハリウッドにも及び、国家が言論や表現の自由を奪った。

大国の中で人権が守られていない国の代表とも言えるのが中国だ。人権派弁護士の逮捕・不当拘束は相次ぎ、2010年にノーベル平和賞を受賞した作家・劉暁波も長期に亘り投獄され、最後は治療の自由さえも奪われて7月13日に息を引き取った。経済・軍事の両面で大国となった中国は劉氏のノーベル賞受賞時に、ノルウェー・ノーベル賞委員会に対して恫喝を行っている。一国二制度で高度の自治を保証されているはずの香港でも2015年10月、中国共産党に批判的な書籍を扱っていた書店関係者が、タイ・パタヤや広東省深圳で相次ぎ失踪するという事件が起きた。同12月末には株主の李波氏が香港の書店倉庫から姿を消し、後に中国の公安当局によって本国に拉致され逮捕されたことが判明した。容疑は「12年前に起こしたひき逃げ事件」というのだから噴飯ものだ。中国においては人権侵害は日常茶飯事だが、この事件での特筆すべき点はタイなど他国で国家が拉致を実行したことにある。香港の憲法にあたる香港基本法は中国政府が香港で法律を執行することを禁じており、一国二制度の重大な違反を侵していることになる。トランプ政権の人権軽視は民主主義崩壊の第一歩とならないか、心配だ。

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2017年5月9日「トランプ米大統領、FBI長官を解任!」

5月9日、トランプ米大統領はコミー米連邦捜査局(FBI)長官を解任した。昨年の大統領選の直前に民主党候補だったヒラリー・クリントン氏の私的メール問題について、最終的に訴追を見送ったことを表向きの理由としているが、クリントン氏による捜査への圧力があったとみなされて逆風が吹き、そのことでトランプ氏が接戦を制する要因となったことを考えれば今更の感は否めない。コミー氏は大統領選直前の昨年10月28日に、クリントン氏の側近が機密情報を含む数十万件のメールを夫に転送したと証言したことを受けて、クリントン氏の指摘メールの再調査を表明したが結局訴追しなかった。このことがトランプ氏の逆転を許すきっかけになったとも言われており、クリントン氏は5月2日の集会で「もし投票が10月27日だったら、私が大統領になっていた」と漏らしている。その後証言には事実誤認があり、実際には機密情報はなく件数も少なかったことが判明した。トランプ大統領誕生の立役者ともいえるコミー氏を解任した真の理由は、FBIが大統領選へのロシア介入疑惑への捜査を始めたことにある。2月15日にはコミー氏をホワイトハウスに呼び捜査を止めるよう圧力をかけた。NSAのロジャーズ局長とコーツ国家情報長官の2人に対しても別々に「ロシアと共謀した証拠はないと公に否定してほしい」と要請している。それらが奏功しないとみるや、今回の解任劇につながった。

その後5月17日に司法省は、トランプ大統領周辺とロシアとの不透明な関係を巡る疑惑「ロシアゲート」捜査のため特別検察官の設置を決め、ロバート・モラー元FBI長官を任命した。今後捜査の進展次第では政権の行方を左右する事態ともなりかねない。これに対し翌18日、トランプ米大統領はホワイトハウスでの記者会見で「すべてが魔女狩りだ。国の分断をもたらす」と捜査を非難している。

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2017年3月24日「日銀、国債売り現先オペ実施!」

日銀は3月24日、約1兆円の国債を一時的に市場に供給する「国債売り現先オペレーション」を実施した。日銀が保有する国債を一定期間後に買い戻す条件付で金融機関に売却することにより市場から資金を吸収する金融引き締め策である。今回のオペの対象期間は年度末をまたぐ3月27日から4月3日までの1週間で、金融機関からは2兆円を超える応札があり、約1兆円を落札した。

これまで日銀は市場から国債を買い上げて資金を供給する「国債買い入れオペ」で金融緩和を進めてきた。トランプ大統領の掲げる政策の影響で米国を起点に主要国で金利が上昇し、昨年11月17日には金利を押さえ込む目的で、あらかじめ決まった価格で金融機関を無制限に買い入れる「指し値オペ」と呼ばれる公開市場操作を実施している。売りたいと言ってきたすべての金融機関から全額を買い取る異例の「買いオペ」で大量の資金を供給していたのが、ここにきて市場から資金を吸収する「売りオペ」に180度急転回したということだ。インフレへと転じ、金融引き締めの必要性が生じたわけではない。にもかかわらずこれまでと真逆の「売りオペ」へと転じたわけは、資金の吸収が狙いではなく3月の決算期末を控えて金融市場で国債不足が極端に強まっていたことが背景にある。国債不足は金融機関が国債と現金を一定期間交換する債権貸借取引で、3月23日公表の指標金利が1週間もので、前日比0.686%低いマイナス0.788%と、過去最大のマイナス金利に沈んでいる。マイナス金利でも国債を欲しがる理由は、金融機関の間では決算期末の貸借対照表上に余分な現金を置いておくよりも国債で運用しているほうが決算上見栄えが良くなるためだ。「期末」を控えて金利を払ってでも国債を確保したいというニーズが膨らんで国債が足りなくなり、金利のマイナス幅の拡大につながったのだ。その対応策として日銀は期末をまたぐ1週間限定で「売りオペ」を実施したというのが事の真相だ。

ただ、異常ともいえる市場の国債不足は、日銀自身が国債を買いすぎたことが根本的な原因だ。長期国債の新規発行額のほとんどを買い入れ、短期国債も毎月、数兆円単位で市場から買い続ける。1月末には日銀による国債の保有割合が初めて発行残高の4割を超えた。1月末時点の国債の発行残高は894兆3357億円。同時点の日銀の国債保有額は358兆1977億円で、残高全体に占める日銀の保有割合は40.05%と、初めて4割を超えている。それに伴い日銀の国債含み損は10兆円に上り、会計検査院も懸念を表す事態を招いた。2016年12月末の国の借金は1066兆円で、そのうち国債が全体の9割近くを占る。2019年前半には買い入れが限界に近づくとの見方もあり、日銀は長く続く金融緩和の出口を探らなければいけない時期にきている。

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2017年3月23日「日本政府、手術支援ロボット研究開発費増額!」

政府は2015年度に高度な手術を支援するロボットの研究開発費として15億円を支給していたが、1月23日、政府が認定した先進プロジェクトのメンバーに追加で1億円増額することを決定した。医療用ロボットの開発を促し、医療技術の向上や関連企業の事業拡大も後押しする。研究の費用対効果が高いとして増額を決定した。

これまで手術支援ロボットは米インテュイティブ・サージカルの「ダヴィンチ」が市場を独占してきた。納入実績は世界で約4000台、日本国内で250台ほどだが、ロボット本体の価格が1台2.5億円するうえ毎年の維持費で1台2千万円以上、10回までの使用制限がある鉗子が1本40万円と高額に上り、コストダウンできれば一気に需要の拡大が見込まれている。前立腺がんの手術件数が全国トップクラスの東京医大病院は2006年に国内で始めて手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入した。前立腺がんの手術実績は累計で2千件を超え、ここ数年はすべての前立腺がん手術をダヴィンチでこなす。米国においても前立腺がんの約8割はダヴィンチを使用している。手振れ防止機能があり、執刀医の5分の1の精緻な動作を実現できることから術後の尿失禁や性機能障害などの後遺障害が残るリスクや術後の合併症を低減できるメリットがある。また、開腹せず小さな穴を4箇所あけて3Dカメラやロボットアームを体内に入れるだけなので患者への負担も少なく入院日数も短くなるため、医療費の低減も期待できる。冠動脈のバイパス手術においては開胸手術の場合肋骨を切り離す必要があるが、ダヴィンチでは不要だ。

現在の市場規模は約4千億円で年率112%の2桁成長を続けている。産業用ロボットでは70%のシェアを誇り世界をリードする日本のロボット技術が医療用では遅れた理由はいくつかあるが、最大の要因は日本の複雑な行政システムにある。医療用でロボットであることから、現在の厚生労働省や文部科学省、経済産業省間でどこが管轄するかの権益争いが繰り広げられたことによる。役所間のセクショナリズムが開発を阻害してきたのだ。米国においては米DARPA(国防高等研究計画局)の国家プロジェクトとして50~100億円の軍事予算がつぎ込まれて開発されたものを民生に転用した経緯がある。日本においてもアベノミクスの成長戦略の一環として遅まきながらようやく開発が活発化してきた。東工大発ベンチャーのリバー・フィールド社、川崎重工業とシスメックスが出資したメディカロイド社、国立がんセンター発のベンチャーA-Traction社などが国産手術支援ロボットの開発に乗り出している。オリンパス社も福島県の国際的先端医療機器開発実証事業費補助金の支援を受け、すでに2台の試作機(非臨床)を発表している。メディカロイド社は東レエンジニアリングなどから第三者割当増資で総額11.5億円の資金を調達し、厚生労働省の承認を得て2020年の販売開始を予定。価格はダヴィンチの半額程度で、世界での日本発手術支援ロボットの普及を目指している。

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2017年1月24日「中国、米国へ言行を慎むよう促す!」

1月24日の記者会見で、中国外務省の華春瑩副報道局長は「米国は南シナ海を巡る争いの当事者ではない。米国が事実を尊重し、言行を慎み、南シナ海の平和・安定を損なわないよう促す」と語った。スパイサー米大統領報道官が23日、中国が海洋進出を強化する南シナ海で「南シナ海は公海であり、米国は国益を守り抜くつもりだ」と述べたことに反論した。華氏は「中国は南沙(スプラトリー)諸島と周辺海域に争いのない主権を持っており、自らの領土主権と海洋権益をしっかりと守り抜く」との主張を繰り返した。

これまでも中国は南シナ海に人工島を造成するなど、領土主権を主張してきた。オバマ前政権時はこれに対し、人工島の12カイリ以内の海域に米軍の軍艦を送って「航海の自由作戦」を展開してきたが、遠巻きに目視することしかできないことを見透かされたかのように抑止効果は薄く、中国は滑走路の建設など軍事拠点作りを着々と進めてきた。昨年12月26日には中国の空母「遼寧」を南シナ海へ派遣し、米国へのあからさまな挑発行為を行っている。

国際法を無視し、武力による領土拡大を続ける中国の覇権主義について、マティス国防長官は「今の中国は明王朝の冊封体制を復活させようとしているかのようだ。周辺をすべて自分の勢力圏にするつもりかもしれない」と分析している。冊封体制とは中国を中心とし、その周りを朝貢国(衛星国)が囲む枠組みのことだ。かつて朝鮮や琉球国がそうであったように、明王朝の復活を習近平国家主席は目論んでおり、朝貢国の中には当然日本も含まれている。マティス国防長官は「現代の世界ではそんなことは絶対に通用しない」とも述べているが、自国利益第一主義で表面的な厳しい中国への言動とは裏腹に、個人的にも中国とのつながりの深いトランプ米大統領はパンダ・ハガーとなる可能性がある。トランプ政権は中国大使に、習近平国家主席を30年以上にわたる「古い友人」と呼ぶ親中派のテリー・ブランスタド氏を指名した。トランプ政権が経済と安全保障面で中国と取引するのでないかとの不安は尽きない。かねてより中国は太平洋の東を米国、西を中国で管理し、太平洋を米中で分割する案を公言してきているが、現実ともなりかねない危うさがトランプ米大統領にはある。今後日本はインドやフィリピン、マレーシア、ベトナムなどとのアジア周辺国と、安全保障面での協調体制を築いていく必要性に迫られている。

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2017年1月18日「マレーシア貿易相、米国のTPP離脱に失望表明!」

1月18日、マレーシアのムスタパ貿易産業相は、トランプ次期米大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱方針を示したことについて「失望した」と不快感を表明した。その上で2月前半を目処に米国以外の参加国と協議を進める方針を明らかにした。

ムスタパ貿易産業相はトランプ次期米大統領が自国優先の姿勢を強調していることへの危機感もあるという。自国内で米国系企業には20万人が雇用されており、企業が撤退するようなことがあれば影響は不可避だ。

日本においても、TPPによりGDPを2014年度GDP換算で実質約14兆円(2.6%)押し上げる効果が試算されているが、日本の輸出に占めるTPP参加国の割合約30%のところ、米国が抜ければ約12%に下がり効果は半減する。またTPPが頓挫した場合、中国主導の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に軸足が移り、アジアインフラ投資銀行(AIIB)も含めて、世界の貿易ルールは米国から中国主導になるリスクを鑑みなければならないが、内向きで自国第一主義のトランプ次期米大統領には関心がないようだ。ドイツなど欧州各国も安全保障や経済面において米国抜きを進めようとしている節が見受けられるが、日本も米国以外の各国とのTPP締結を急ぎ過度な米国依存を脱しなければならない時期にきた。

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2016年12月12日「トランプ次期米大統領、NEC委員長にゲーリー・コーン氏を指名!」

12月12日、トランプ次期米大統領は新政権の国家経済会議(NEC)委員長にゲーリー・コーン氏を指名すると発表した。コーン氏はゴールドマン・サックスの社長兼COOを務めており、財務長官に指名されたスティーブン・ムニューチン氏、主席戦略官・上級顧問のスティーブン・バノン氏も同社出身で、新政権におけるゴールドマン色は一層鮮明となっている。選挙中は「ヒラリー氏はウォール街の代弁者だ」と非難し、銀行と証券業務を分離するグラス・スティーガル法の復活も匂わせていたトランプ次期米大統領なのだが、当選して組閣に入るとゴールドマン・サックスとの親密さが浮き彫りとなる皮肉な結果を招いている。

不動産王として名高いトランプ次期米大統領も、1980年代後半からの多角経営に失敗して巨額の債務を抱え、91年にカジノが、92年にホテルが倒産した。遊覧船事業と航空事業から撤退し、マンハッタンに所有する物件も多数中国企業に売却、2007年後半のサブプライム問題以降の不況のあおりで、トランプ・プラザ、トランプ・マリーナ、トランプ・タージマハールを経営するトランプ・エンターテイメント・リゾーツ社は2009年2月17日に連邦倒産法第11章の適用を申請している。現在も中国系金融機関やゴールードマン・サックスから多額の借金を抱えていることと、今回の組閣人事は無縁ではあるまい。

中国は米国債を保有する最大の国で、これまでもサブプライム問題での深刻な不況時にも中国による投資に助けられたことから、オバマ政権時においても対中国政策は遠慮がみられた。2009年に当時のクリントン国務長官が対中外交において「銀行を相手に強く出られるか?」と嘆いたという逸話が報じられたほど、中国の対米投資は外交面に大きな影響を及ぼしている。国だけではなく大統領個人でも中国に依存しているとすれば、トランプ新政権での対中政策は不安が尽きない。選挙中はヒラリー氏をウォール街の代弁者と平気で非難し、ウォール街に不利な政策も匂わすなど虚言も厭わない性格のトランプ次期米大統領の言動には注意が必要だ。中国に対して厳しい言動があったとしても、それが本音とは限らない。

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2016年11月20日「次世代がん治療施設に55億円協調融資!」

日本政策投資銀行は、三井住友銀行や池田泉州銀行と共同で次世代がん治療施設を進める大阪医科薬科大学に55億円を協調融資することを決めた。新施設「関西BNCT医療センター」(仮称)は2018年6月開設予定で、重粒子線に次ぐ次世代のがん治療法と目される「ホウ素中性子捕捉療法(BMCT)の研究および診療を行う。大阪医科薬科大学は住友重機械工業と医薬品開発のステラファーマとの共同開発で、BMCTの臨床試験を京都大学原子炉実験所と総合南東北病院に設置した中性子を作るための小型加速器にて2014年から始めていたが、2016年1月から最終治験に入っており、悪性腫瘍の再発患者で治療効果と安全性を確かめ、2018年にも先進医療としての国の指定を目指している。

BMCTはがん細胞を取り込む特性を持つホウ素を投与し、中性子を照射してがん細胞の消滅を目指す治療で、これまで治療が困難だった悪性脳腫瘍の悪性神経膠腫や皮膚がんの悪性黒色腫、また転移や再発がんにも効果が期待されている。

これまで中性子は原子炉から取り出されていたため、コスト面や安全面から普及が困難だったが、住友重機械工業と京都大学が共同で小型加速器を開発し、加速器から中性子を作れるようになっため、一気に実用化に向けて加速した。

2016年11月12日「スイスで個人にマイナス金利適用!」

11日、スイスの郵便貯金を運営するポストフィナンスは個人顧客を対象に、口座残高の100万スイスフランを超える金額に年1%のマイナス金利を2017年2月1日から適用すると発表した。

2015年1月から中央銀行であるスイス国立銀行は、銀行が中央銀行に預ける金額から一定額を超える分に対し0.75%の手数料を徴収している。このマイナス金利の影響で金融機関の収益は悪化し、これまで多くの金融機関が法人顧客にマイナス金利の負担を転嫁してきたが、今回ポストフィナンスは個人の預貯金にもマイナス金利の導入を決めた。ポストフィナンスは中央銀行によるマイナス金利の影響で「今年は既に1千万スイスフラン以上の費用が生じている」と、個人へのマイナス金利導入についてその理由を述べている。

2014年6月に欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利政策を導入した影響で、スイスやデンマーク、スウェーデンなど欧州域内にマイナス金利が広がり、民間銀行が中央銀行にお金を預けると目減りする仕組みが出来上がった。欧州の銀行関係者からは「これは事実上の銀行税だ」との不満の声も聞こえる。

日本においては、銀行が中央銀行である日本銀行にお金を預けると0.1%のマイナス金利が発生している。これまでデフレ脱却のため日銀が銀行の持つ国債を買い上げ、市場にお金があふれるようにする量的緩和を続けてきたが、効果が頭打ちの半面、日銀の国債保有残高は増加の一途を辿り限界が見えてきたことから、マイナス金利を適用して日銀に預けるお金が市場に回るよう新たな一手を打ってきたのだ。その結果、日本においても銀行の収益は悪化しており、スイスのケースは対岸の火事ではない。日銀がマイナス金利を拡大すれば、法人や個人顧客に対するマイナス金利も現実味を帯びてくる。

そもそもこれまで異次元の金融緩和を続けながら一向にデフレ脱却できないのは、市場に需要が無く良質な融資先が少ないからだ。景気が上向かなければ個人消費も伸びず、企業の設備投資も増加しない。これまで金融政策だけでデフレ脱却が図れるとして成長戦略や規制緩和をおざなりにしてきたツケがいよいよ回ってきた。      

2016年11月10日「トランプ大統領誕生!」

8日、全米各州で投票、即日開票され、米大統領選は民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を接戦の末、共和党の不動産王ドナルド・トランプ氏が破り、9日未明にニューヨークで勝利宣言した。トランプ次期大統領は、「米国第一主義」を標榜する。

トランプ次期大統領は勝利宣言演説で、「米国を再建し、アメリカンドリームを復活させる。経済成長を加速させ、最強の経済を作る」と経済優先を訴えた。また、「米国の国益が常に最優先」とも述べて、「米国第一主義」を鮮明にした。こうした考え方は、選挙対策本部長を務め最側近の右派、バノン氏の影響も大きい。

当初、ワシントンやニューヨークのメディアは、こうした反グローバル主義的な考え方について否定的で泡沫候補と目されていたのだが、地方の一般国民の多くはこれを支持したことになる。こうした傾向は米国に留まらない。欧州各国など世界的な潮流で、フランスの極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首やドイツのAfD、ペトリ党首、オランダの極右政党、自由党のウィルダース党首などはすでにトップを窺う有力な存在となっている。イギリスの英国独立党、デンマークの人民党など、ポピュリズムであったり排他主義、利己主義を声高に訴える政党が支持を集めているのが現状だ。アジアにおいても中国は核心的利益の名の下、武力行使も辞さない強引な領土拡大を続け、習近平主席は明王朝時代の冊封体制の復活を目指しているかのように、覇権主義を隠そうとしない。

こうした自国第一主義、利己主義が幅を利かして良いはずが無い。先進各国は、利己主義ではなく他者を思いやる寛容の精神を持った利他主義であってこそ、世界の秩序は保たれ平和を構築することができる。各国が自国第一主義を貫こうとすれば、利益をめぐっていずれか争いごとが生じることになる。危険な傾向だ。      

2016年10月22日「イタリアのソブリン格付け、フィッチが見通し引き下げ!」

大手格付会社のフイッチ・レーティングスは、21日にイタリアのソブリン格付けの見通しを、これまでの「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたと発表した。

フイッチによるイタリアの格付けは「BBB+」で投資適格と評価されている。投機的カテゴリーの「BB+」まではまだ3ノッチあり、特段危機的状況とはいえないものの、デフォルトしたギリシャの影響をイタリア、スペイン、ポルトガルなどユーロ圏の低格付け国が受けていることは否めない。イタリアは2017年度予算で財政赤字計画が予定よりも遅れる見通しとなり、格下げリスクは高まっている。

イギリスのユーロ離脱決定もあり、当初から経済や財政状況の異なる複数国の金融政策を欧州中央銀行(ECB)がコントロールできるのか疑問視されてきたが、このまま更なる離脱やデフォルトが相次げば、ユーロという単一通貨による欧州連合自体が瓦解しかねず、ユーロを舞台にした壮大な実験は失敗に終わったという最悪の結果も考えられる。      

2016年10月12日「日銀の国債保有、初の400兆円超え!」

12日発表の日銀営業毎旬報告によると10日時点で400兆3092億円で、日銀の国債保有額が初めて400兆円を超えた。9月30日時点に比べ約3兆円増加している。

日銀は2013年4月からの異次元緩和で大量の国債買い入れを進めてきた。130兆円強だった日銀の国債保有額はこの3年あまりで3倍以上に膨れ上がり、国債全体の発行残高に占める割合も3分の1以上を占めるまでになった。

先進国において中央銀行は財政規律を守るため、国の借金である国債を直接引き受けることが禁止されているが、日銀は市場を通して金融機関などから年80兆円のペースで買い取り、国債の保有残高を増やし続けてきた。それでも日銀が発行している紙幣の総額以上は国債を保有できない日銀券ルールがあったのだが、これも黒田総裁が無くしてしまった。高値で日銀が買い取ってくれるため、金融機関はマイナス金利でも国債を買って日銀に転売する。日銀の含み損は大きく、損失が年内にも10兆円に達するとの見通しもある。金利が上昇すれば国債価額は下落し、さらに損失は膨らむことになる。大手銀行が債券下落リスクを懸念して国債の保有残高を減らしている中、金利上昇時に最も懸念されるのが皮肉なことに日銀となった。中央銀行のデフォルトは当然のことながら日本国のデフォルトである。市場では、この1~2年の間に日銀が国債を買えなくなる可能性も指摘されている。すでに打つ手が失われてきているのが現状だ。

原因の一つとして挙げられるのは、アベノミクスを支えてきた浜田宏一内閣官房参与が金融政策だけでデフレ脱却が図れるとして成長戦略や規制緩和をなおざりにしてきたことにある。今になって金融政策だけではなく財政政策も必要と変化してきたが、その間に日銀による金融政策は限界に達しようとしている。      

2016年10月7日「成年後見人の弁護士1億円横領で懲役6年の判決!」

11月7日東京地裁において、成年後見人として管理していた女性3名の口座から1億1200万円を着服し、業務上横領罪に問われた弁護士に対して懲役6年の判決を言い渡した。

成年後見制度は、認知症や精神障害などで判断能力が十分でない人を支援する目的で、1999年の民法改正により従来の禁治産制度に代わって制定され、翌2000年4月1日に施行された。    不動産や預貯金などを管理したり、本人に代わって契約を結んだりする。親族のほか弁護士や司法書士などが業として後見人を務めている。最近では能力の劣った親に代わり、実子が預貯金や保険の手続きを行おうとすると後見人であることを求められるなどその役割は増している。

当初は親族が後見人となるケースが多かったが、後見人の生活費に流用されるなど使い込みが多発したため、裁判所が監督人を付けるなど監視を強化するようになった。被後見人の利益のために空き家となっている自宅を売却するなどの資産運用が制限さるようになり、報告義務などの負担だけが増すことから最近では費用を支払って弁護士などに委託するケースが増えてきている。そうした中で、弁護士というだけで信頼してしまい裁判所などの監視の目が甘くなっていたことは否めない。

2014年には弁護士、司法書士、行政書士などの専門職が裁判所によって解任されたケースは22件で被害総額は5億6000万円、2015年は過去最悪の件数となる37件を記録し、2016年も被害件数30件に上っている。背景には、士業に対する甘い監視と競争過多から弁護士などの士業の収入が低下してきていることが挙げられるだろう。法務省の調査では2015年の新人弁護士の平均年収は568万円で、5年前と比べ210万円減少している。これまで大きな収入源だった消費者金融への過払い返還請求が時効を迎えつつあり、今後も弁護士などの収入格差は2極化して拡大するものと考えられる。

今回の裁判で稗田裁判官は「被後見人らを裏切り、成年後見制度に対する信頼も揺るがしかねない」と判決で指摘したが、まさにその通りであろう。東京家裁は昨年末頃から弁護士などが後見人に選定された場合においても、一定以上の財産を預かる場合に別の弁護士などを監督人として付けるようになった。      

2016年09月13日「概算医療費、41.5兆円と過去最大!」

厚生労働省が9月13日に発表した2015年度の概算医療費は41.5兆円に上り、前年比3.8%増で過去最大となった。医療費はこの10数年膨張を続けてきているが、入院1.9%、外来3.3%に対して調剤費が9.4%増と大幅に増加しているのが目立つ。入院費は一定期間経過ごとに診療報酬を減額したり、出来高払いから包括払いへの変更や、平均在院日数によってランク分けするなどの対策を施し、平均入院日数はピーク時1966年の半分と過去最低まで低下した。

治療費も高額な検査や治療については健康保険で承認せず先進医療に指定するなど、新たな高額治療の抑制を図っている(医療費とは1年間に医療機関に支払われた総額を指すが、先進医療は患者全額負担のため含まれない)。薬剤費もジェネリック(後発医薬品)を推奨して抑制を図ってきたが、C型肝炎や抗がん剤などで高額な新薬が相次ぎ大幅な増加につながった。今後は、高額薬の先進医療適用などの医療費の負担軽減策を講じてくることが予測される。医療費の抑制は、そのまま患者の負担増へと転嫁される仕組みである。

2016年07月15日「日本国債格付け見通し引き下げ相次ぐ!」

6月1日夕方、安倍首相が消費増税を2019年10月まで2年半延期することを正式に公表したことにより、格付け各社はそれぞれ今後の見通しについて見解をリリースした。同日にS&Pは「影響しない」との見解を示し、「A+」のソブリン格付けと「安定的」との見通しを維持した。一方、同じ米系格付け会社のムーディーズは、2日に「A1」の格付けと「ネガティブ」とのアウトルック自体に変更はなかったものの「政府の財政健全化目標の達成に向けた能力と意思に対する疑念を高める。増税延期によって国内総生産(GDP)の約1%に相当する税収増が見送られると試算している」として懸念を表明した。その後13日にはフィッチ・レーティングスが、日本政府の2020年度の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)黒字化の財政目標に対して「目標達成に向けた具体的な措置を公表していない」として、格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」(格付けは「A」のまま維持)に引き下げた。米欧系の格付け会社が見解を発表する中、日本の格付け会社2社にも動きがあった。

日本経済新聞社系列の格付投資情報センター(R&I)は6日、格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」へと引き下げた。増税先送りによって「財政再建の先行き不透明感が高まった」としている。格付け自体は「AA+」に据え置いたものの、「財政健全化に有効な手立てを打ち出さない限り、格下げは避けられない」との見通しを示している。また、安倍首相の経済対策についても「潜在成長率が高まらない中で財政出動をしても負担増を残すだけに終わる」との懸念も示した。日本格付研究所(JCR)も、他社より1月以上遅れたものの7月14日になって「安定的」から「ネガティブ」に引き下げたと発表した。増税延期によって「中長期的な財政の持続可能性確保に対する不透明感が増している」と判断したことによる。格付けは最上位の「AAA」を維持している。日本の格付け会社が海外の格付け会社に比べて日本国債の格付けを高く評価するのは考えられることではあるものの、JCRの「AAA」は際立っている。国の債務が対GDP比で悪化の一途を辿っている現状で、最上位の格付けを付与し続けるのはどのような理屈を並べ立てても説得力に欠ける。レーティング・スプリットは格付け会社間で当然に存在するものだが、それにしてもフイッチとの間で6ノッチもの格差が生じているのは異常な状態だ。JCRが旧大蔵省主導で作られた格付け会社という経緯は、最上位を維持し続けることと無関係ではないと思わざるを得ない。

日本国債の格下げは、各方面に多大な影響を及ぼす。日本円の信用力低下による物価上昇、悪性インフレといった直接的な影響だけではなく、銀行のBIS自己資本比率の低下や民間企業の格付けにも悪影響を与えることになる。格付けには、国の格付けを民間企業が原則として上回ることができないというソブリンシーリングが存在する。ソブリン格付けが上限となるため、日本のソブリン格付けが引き下げられるとそれを上回ることになる民間企業の格付けも同格まで引き下げられてしまうというルールである。もっとも政府の影響を受ける銀行は国の格付けを上回れない一方、国際的な企業はその限りではない。現にトヨタは、S&P「AA-」、ムーディーズ「Aa3」と、国の格付けを1ノッチ上回っている。ただ、これにも上限はあり、東京ガスやJR東海など国の規制を受けやすい業種は2ノッチまで、トヨタのようなグローバル企業でも4ノッチまでしか上回ることができない。企業の格付けが引き下げられると、社債など資金調達コストの上昇につながる。日本国債の格付け引き下げが相次ぐと、日本経済全体が地盤沈下を引き起こすことになりかねない。

2016年07月12日「南シナ海問題で初の国際司法判決!」

7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、中国が独自の権利を主張する境界線「九段線」に国際法上の根拠はないとの判決を出した。提訴したフィリピンの主張をほぼ全面的に認める判決となった。予測された判決内容であり、判決に先立つ6日には中国の王毅外相が米国のケリー国務長官と電話協議し、「結果がどうであろうと中国は自らの領土や海洋権益を守る。米国が領土問題で言行を慎み、中国の主張を損ねるいかなる行動も取らないよう求める」と、判決を受け入れない方針を示していた。

昨年の8月11日には、ASEAN外相関連会議で米国が中国の南シナ海埋め立てを非難したことを受け、在比中国大使館が地元紙スターに同会議で王毅外相が埋め立ての正当性を主張し、領有権を争うフィリピンや同国を支持する日本も名指しで非難している。その際、物議を醸したのがASEANの外相が並んで握手するイラストで、フィリピンだけ極端に背が低く侮蔑的に描かれていた点である。さらに「セミを襲おうとするカマキリは、後ろにいる鳥の存在を知らない」という荘子の言葉も紹介して、カマキリをフィリピンに、鳥を中国に喩えていると推察できることから、経済力と軍事力を背景に露骨な恫喝をこれまでも行ってきている。

ただ、この司法判決を中国が無視し続けるようであれば、これまで中国の経済力に擦り寄っていた英国やEU諸国も中国離れが一気に加速しかねない。南シナ海の問題に留まらないからである。中東やアフリカ、ロシアなどでも武力による領土の占領が拡大しかねない。対中ビジネスを重視して黙認してきたドイツのメルケル首相やフランス、英国などもかつてない懸念を明確に示し始めた。米国のオバマ大統領やライス大統領補佐官は明らかな親中派といえるが、次期政権の対中政策によっては四面楚歌にも陥りかねない。経済力だけではなく軍事力の行使も辞さないのか、注目されるポイントである。

2016年07月12日「南シナ海問題で初の国際司法判決!」

2016年06月27日「英国のソブリン格付け、引き下げ相次ぐ!」

6月27日、大手格付け会社のスタンダード&プアーズは、英国のソブリン格付けを最上位の「AAA」から「AA」へと2ノッチ、フイッチ・レーティングスも「AA+」から「AA」へと1ノッチ引き下げたと発表した。今後の見通しを示すアウトルックは「ネガティブ」としており、更なるノッチダウンの可能性がある。ムーディーズは同月24日に、アウトルックを「ネガティブ」へと下方修正している。国民投票によるEU離脱決定が、英国経済と財政にマイナス要因になるとの懸念によるものである。今後、海外企業の英国離れが現実化すると、更なるノッチダウンが相次ぐことが予測される。

2016年06月17日「日銀、国債保有残高3分の1を超える!」

6月17日発表の日銀、1~3月の資金循環統計(速報)によると、3月末時点の日銀の国債保有残高は364兆円で前年比32.7%増加した。残高全体に占める割合は33.9%と過去最高を記録している。中央銀行が直接国債を引き受けることは財政規律を乱すとして禁止されているが、銀行から買い取る形で間接的に保有残高を増やしてきた。日銀のマイナス金利政策もあり国債も金利低下を続け、新発10年物国債の利回りはマイナスに低下しているが、それでも国債を銀行が購入する理由は、日銀が高く買い取ってくれるからだ。国債を日銀が買い取ることで、国債の安定消化とマネーサプライを増やし金融緩和を続けることを目的としているが、これにも限界はある。日銀の買取が鈍れば、国債価額の低下(金利は上昇)につながり、日銀の不良債権化が懸念される。

2016年06月17日「日銀、国債保有残高3分の1を超える!」

2016年06月13日「新発10年物国債利回りが-0.165%と過去最低を更新!」

6月13日の債券市場で、新発10年物国債利回りがマイナス0.165%となり過去最低を更新した。マイナス金利の日本国際は全体の8割近くまで達し、15年償還の長期の国債までもがマイナス金利となっている。日銀による異次元の金融緩和政策により、マイナスをつける長期国債も年80兆円のペースで日銀が買い取りを続けて消化できているのだが、昨年末の銀行の国債保有残高は237兆円と、この3年の間に3分の2に目減りした。2015年度に発行された新規国債は37兆円弱。日銀が年80兆円の買い取りを続けるには差額の43兆円を銀行等から集める必要がある。

しかし、国債は金融取引の担保に一定量が必要で、すでに大手銀行や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は売却できる余地が限られてきている。こうしたことから日銀内においても木内登英日銀審議委員は、金融政策決定会合で年80兆円の買い取りを45兆円に引き下げる提案を続けているが、2%のインフレターゲットが実現できていないとして反対意見が多数を占めている。しかし、このままでは国債の新規発行額を大幅に増やさざるを得なく、そうなれば日本国債の信用力は大幅に低下することだろう。それでなくても中央銀行が直接国債を買い取ることは財政規律の点から禁止されているのだが、銀行等を経由して日銀が買い増しを続けている現状がある。

国債の保有比率は昨年末で4割を超え、年内には5割に迫る見通しだ。日銀の健全性にも疑問符が付く異常事態に陥っている。引き締めに転じれば株価や経済に及ぼす負の影響は大きく、このまま金融緩和を続けても財政は悪化を続けいつかは信用力の低下から景気が悪い中でのインフレという最悪の事態も想定される。すでに金融政策の選択肢は失われつつあるのだが、木内審議委員の提案は、どちらがより最悪の事態かを考慮してのものだろう。アベノミクスの3本の矢で放たれた矢は金融政策のみで、規制緩和や財政出動による成長戦略が、既得権益が優先され十分でなかったことから金融政策の道が閉ざされてしまったのだ。

2016年06月13日「新発10年物国債利回りが-0.165%と過去最低を更新!」

2016年05月31日 「医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画を閣議決定!」

5月31日、「国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画」を閣議決定した。医療機器政策に特化した政府の初めての基本計画であり、厚生労働省のリリースによれば、「我が国において今後も最先端の医療が受けられるようにするとともに、医療機器産業が国内経済を牽引し、今後更なる成長・発展が見込める産業分野となるため、医療機器の研究開発及び普及に関して、基本方針及び総合的かつ計画的に実施すべき施策を取りまとめたもの」であり、「本計画に基づく施策については、毎年度、その実施状況の進捗管理を行うこととし、関係府省等が連携して着実な実行を図っていく」としている。出口戦略を見据えた支援、産学官連携の「研究・開発」、「承認審査」、「実用化」、関係機関連携による国際展開支援の「国際展開」と環境整備を基本計画のポイントとしている。

要は、日本国内において最先端医療が迅速に受けられるための環境整備と、最先端医療機器の海外展開なのだが、基本計画の肝は医療機器の開発加速と海外への輸出拡大にある。これまで、エックス線による放射線治療機器は、米バリアンなど海外企業からの輸入に頼ってきたが、重粒子線や陽子線を用いた粒子線治療機器や次世代のがん治療として臨床試験中のホウ素中性子補足療法は、いずれも日本が力を入れてきた加速器を用いており、日立や東芝、三菱といった日本のメーカーが先行している。米国やフランス、ロシアなどの受注実績を上げ、安倍首相自身もアラブ首長国連邦(UAE)を訪問した際、首相自らトップセールスをかけて受注に成功していることなどから、成長分野として政府が注力していくことになった。

今後は国産の手術支援ロボットの開発を支援し、輸出に結び付けたい意向だ。手術支援ロボットは、国内の医療機関においても導入が増えてきているが、その全てを米国製のダビンチが占有している。1台2億5千万円だが、毎年高額なメンテンスフィーがかかる。ロボットや3Dカメラなどは本来日本の得意分野のはずだが、日本が出遅れた理由は政府が支援どころか足を引っ張ってきたことにある。ロボットは文部科学省の所管だが、医療分野は厚生労働省となる。両省庁が権益を主張し、規制緩和がなされなかったのだ。この手の話は枚挙に暇がない。福島の原発事故では、高線量の中での作業用に米国製の遠隔操作ロボットが用いられたが、実は2001年に国産のロボットが6台製造されていた。

しかし、事故は絶対におきないという原発の安全神話を守るため、一度も配備することなくそのまま廃棄されたのだ。万一にも事故はおきないのだから万一に備えてロボットを用意しておくと地元住民が不安になるというのが廃棄の理由だ。医療機器の世界市場は、2017年には10年前の2倍超となる4344億ドルにまで上ると見込まれており、安倍政権下では重点項目の一つとなっているが、その成否は省庁間や政治の利権、セクショナリズムを廃することができるかどうかにかかっているといえるだろう。

2016年05月31日 「医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画を閣議決定!」

2016年05月26日「トランプ氏、パリ協定脱退を表明!」

5月26日の記者会見でドナルド・トランプ氏は、大統領となった場合、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」から脱退する意向を表明した。「米国第一」を標榜し、地球温暖化対策は雇用を失うとして米国産の原油や天然ガス、石炭の生産を増やす方針を示した。地球温暖化は「でっちあげだ」と一刀両断している。

アメリカ国旗

2016年05月04日「トランプ氏、在日米軍の駐留費全額負担を求める!」

5月4日、米CNNテレビのインタビューで、米大統領選共和党候補のドナルド・トランプ氏が、大統領に就任した場合、在日米軍の駐留経費全額の負担を求めることを表明した。応じない場合、米軍を撤退させる考えを示した。日本はこれまで「思いやり予算」として年間約1900億円を負担してきているが、米国の2016年度の予算教書によると在日米軍への支出は55億ドルに上っている。

トランプ氏は先に日本の核保有を容認する発言もしており、トランプ氏の内向き志向が鮮明になった。米軍が日本からグアムやハワイまで撤退すれば、中国が尖閣諸島や沖縄、台湾への軍事介入を強めることが現実味を帯びてくる。TPPの撤回も含めて中国を利し、NATOと距離を置くことになればロシアの周辺地域に対する影響力が増すことになるだろう。

2016年05月04日「トランプ氏、在日米軍の駐留費全額負担を求める!」