FPよろず相談

FPよろず相談CASE.1「上手なお金の使い方」

CASE1

八十二歳になる女性からの相談。この女性は亡き夫の残した広島市内の自宅に一人住まいを続けている。 生活を支えているのは、わずかな年金収入と預金の取り崩しだ。

相談内容は、東京で暮らしている長男が預金通帳を持っていってしまったまま、いくら催促しても返してくれない。税金や社会保険料の支払いもままならず、このままでは健康保険証を取り上げられてしまうのも時間の問題だ。

これまで、弁護士名で長男に内容証明郵便を送付して通帳の返却を求めたが不調に終わっている。相談を受けた弁護士も、親子間とのことと匙を投げてしまった。

問題は長男が何故、老いた実母の預金を取り上げてしまったかだ。片一方の情報だけでは、真実を探り当てるのは難しい。

一流企業を定年退職し、近々結婚を控えている息子を抱える長男は、お金に困っているということではないらしい。にもかかわらず虎の子の預金を取り上げたのは、母親の浪費癖のためだ。相談者自身は否定するが、デパートの外商で高価な品を買い漁り、高級料亭のお弁当を届けさせる日々で、夫の残した財産を既に数千万円も食い潰しているというのだ。法的な措置が講じれる程、判断能力が著しく欠如しているとはいえないところから、母親の要介護時等の費用目的で残った預金を取り上げてしまったということなのだが・・・。

事実は、やがて明らかとなる。税金や社会保険料の滞納だけではなく、デパートや宝石店に多額の借金があったのだ。クレジットの延滞利息がかさみ、借金総額はさらに膨れ上がっている。長男と、借金を責任もって清算すること、および預金の一部を相続時精算制度を活用して、生前贈与することで和解した。宝石店やデパートには貴金属類の買い取りを要求し、クレジット会社には金利の全額免除をお願いした。

これで借金を完済し、長男に生前贈与しても本人に多少の預金を残すことができる。お金は貯めるということだけではなく、上手に使うことも難しい。さて、これで終わりということではない。ようやく半分解決したに過ぎないのだ。お金が元でこじれた親子間の問題がある。長男の本心は、来月に迫った息子の結婚式にできることならば出席してもらいたいと思っている。その夜、母親から東京にいる長男に久方振りの電話をしてもらった。嫁姑の問題もあり、今後も円満な交流が一朝一夕に築けるとは思わない。しかし、長く止まっていた親子の時間は再び時を刻み始めたのだ。
老母は今、来月東京で行われる孫の結婚式に出席するための準備に余念がない。

FPよろず相談CASE.2「マイホームを守りたい!」

CASE2

54歳の主婦と56歳の男性からの相談。それぞれ別々の相談でありながら内容は大変似通っている。 住宅ローンの支払いが困難になったので、払い方などの変更を検討したいとのことだった。 主婦の方は住宅金融公庫からの借り入れで、支払い期間を延長することにより毎月の支払いを軽減することができた。

一方、男性の方は住宅金融公庫から民間金融機関・銀行へと借り換えており、すでに自分で期間延長を申し入れたものの断られている。それも当然、担保に取られている住宅の時価はローン残債を上回っており、これでは、リスケジューリングに応じてくれるはずがない。何故ならば、お釣りのくる十分な担保を持っており、どう転んでも銀行に損はないからだ。この男性が借り換えをしていなければ先の主婦と同様、住宅金融公庫で返済期間の延長、親子リレー返済など、様々な条件変更も可能だった。

よくよく聞くと、住宅ローンの返済のために消費者金融から借金もしている。さらに、男性は最近失業し、収入は失業手当と妻のパート収入に頼っている状態だ。キャッシュフローを見ると、住宅ローンの条件変更どころの話しではない。すでに家計は破綻している。住宅ローンを滞納し住宅を差し押さえられる前に、少しでも高額で住宅を任意売却した方が良いとアドバイスした。これで、住宅ローンや消費者金融などの残債が全額返済できる目処が立つ。このままでは、住宅を失った上に借金が残る最悪の結果にもなりかねない。住宅は失うが借金もなくなる。 家族で力を合わせて、一からの再スタートが可能だ。

しかし、男性は住宅に固執する。幸せだった一家の象徴が住宅なのだ。住宅を失えば家族も離散してしまうような恐怖感すら覚える。何としてでもマイホームを守りたい! このままでは、住宅を差し押さえられてしまう日も近い。自己破産して免責を得れば借金はなくなるものの、住宅も失うことになる。そこで、平成13年4月から個人にも適用されるようになった民事再生手続き(給与所得者等民事再生手続き)の活用を考えた。住宅ローンを除く債務が3千万円以下の場合、借金総額を5分の1(または100万円のいずれか多い方)にまで圧縮することができる。住宅ローンは適用外だが、住宅資金特別条項により期限の延長や元本の据え置きなど毎月の返済額を少なくするための交渉が可能だ。給与所得者の場合、債権者の同意は不要で、抵当権に基づく住宅の競売手続きがすでに行われている場合でも、その中止を求めることができる。

再生計画次第では、マイホームを守りつつ、まさに家計を再生させることもできよう。 民事再生手続きを受けるためには、継続して収入を得る見込み(年金生活者も可)が必要だ。現在、失業中であっても、再生計画提出までに就職が内定している場合はその要件を充たすことになる。相談者の場合、まずは再就職して、額は低くとも定期的な収入を得ることが先決だ。マイホームを守りたい!これに固執するあまり何もかも失った挙句、自己破産に追い込まれる例も決して少なくない。なりふり構わず、石にかじりついてでも守り抜く覚悟を家族全員で共有できるのか。早速、家族会議を開催することとなった。

FPよろず相談CASE.3「名目金利と実質金利」

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50歳台夫婦の相談。預貯金を中心に安全確実な運用を心掛けてきた。しかし、長引く超低金利で利息は僅か。 1千万円超に適用される大口定期預金でも1年で0.03%、1千万円預けて1年後の利息は3千円にしかならないのだ。お金に困っているわけではないが、長寿社会を迎えて老後生活が不安。間もなく入る予定の退職金と預貯金の一部を外貨建て預金に振り替えた方が良いのだろうか・・・。

為替リスクがあるのは承知しているが、オーストラリアドルやニュージーランドドルのキャンベーン金利10%は魅力的だ。何しろ国内の利息が0.03%なのに対して、10%もの確定金利なのだ。怖いのは為替リスク。外国為替についてアドバイスして欲しいとのこと。

名目金利と実質金利の説明から始めた。国内金利0.03%や外貨預金10%は、いずれも名目金利。しかし、我々にとってはそのお金でいくら買えるのか、お金の実質的価値の方が大切だ。消費者物価指数が下落を続けている現状では、たとえ利息が付いていなくてもお金の価値は上がっていることになる。去年の1万円より、今年の1万円の方が沢山のモノが買える。元本を減らさないだけで、実質金利は高くなるのだ。

反対にいくら4%の名目金利があっても、インフレ率が6%であれば実質金利では-2%ということになる。金利は名目ではなく、実質金利で捉えることが大切だ。外貨建て預金では、為替手数料等のコストを差引いた、最後に手元に残る利息で見なければならない。先程のキャンペーン金利年10%の仕組みは、1ヵ月や3ヵ月だけのキャンペーン期間金利を年利に換算したものだ。

年利に換算して10%と表記しているが、3ヵ月の定期預金であれば10%の12分の3で2.5%、税引き後は2%の金利に過ぎない。TTS1豪ドル77円で100万円を預けると元本は1万2,987豪ドルとなる。 税引き後利息2%の259.74豪ドルを加えた元利合計1万3,246.74豪ドルを、為替レートが変わらなかったとしてTTB1豪ドル72円で円に戻すと手取額は95万3,765円となる。 為替が変動しなくても、100万円で預けた預金が3ヵ月後には4万6,235円の元本割れ、これがキャンペーン金利10%の実態だ。外貨預金は為替手数料などのコストも考慮した実質金利で判断することが大切。 夫婦は、金利10%の実態に驚きを隠せない。